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田辺三菱製薬「デパス」製造者の知られざる歩み

2019/12/27(金) 6:05配信

東洋経済オンライン

メディア関係者と医療者の有志で構成するメディカルジャーナリズム勉強会がスローニュース社の支援のもとに立ち上げた「調査報道チーム」が、連載で追っている「合法薬物依存」。第5回はデパス製造の本家本元に斬り込む。
第1回:合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情(2019年11月29日配信)第2回:20年間「デパス」を飲み続ける彼女の切実な事情(2019年12月3日配信)第3回:薬剤師が見たデパス「気軽な処方」が招いた実態(2019年12月6日配信)第4回:「デパス」に患者も医者も頼りまくる皮肉な実態(2019年12月10日配信)

【図解】製薬業界の再編に翻弄された吉富製薬など

■デパスは吉富製薬が1983年に発売した薬

 これまでは患者・医師・薬剤師という当事者に話を聞いてきた。しかし、この薬にはまだ当事者というべき存在がいる。その1つが現在デパスを製造販売する田辺三菱製薬だ。

 ※本来複数の製薬企業から同一成分の薬が発売されている際の表記では、成分名のエチゾラムを使うのが一般的である。しかし、服用患者も含め世間一般では簡単に覚えやすい「デパス」でその名が広く知られていることが多く、田辺三菱製薬がデパスの製造者であるため、本記事では「デパス」と統一することをあらかじめお断りしておく。

 製薬企業は世界的に見れば、盛んに合併を繰り返しているが、日本国内の場合はそうした動きは一部にあったものの、欧米などと比べればまだ緩やかだと言われている。しかし、ことデパスを販売している製薬企業を見ると、日本ではごく一部だった合併の波に洗われてきた。

 第1回で触れたように、デパスはもともとは1984年に当時の吉富製薬が発売した薬だ。

 吉富製薬は今年日本史上最大の巨額買収により製薬業界世界トップ10に躍り出た武田薬品の前身・武田長兵衛商店と日本化成工業が1940年に折半出資で設立した武田化成に源流を持つ。

 その発祥の歴史をたどると、現在の九州地方(沖縄県を除く)で面積5.72平方キロという最小の自治体である福岡県築上郡吉富町に行き着く。

 戦前、後に町制を敷き吉富町となる東吉富村では、製糸工場建設を村発展の起爆剤と考えていたが、同工場建設計画が白紙化。その最中、工場用地を探していた武田長兵衛商店が目をつけ、同地に武田化成の工場建設に至った。

 第2次世界大戦中、武田化成は南方戦線で軍需品だった抗マラリア薬などの製造で栄えたが、1946年に吉富製薬に商号変更して武田薬品(1943年に武田長兵衛商店から商号変更)から独立。以後は精神科という国内の製薬業界ではニッチな領域に強みを持つ製薬会社として成長する。そうした中で生み出された製品の1つがデパスだった。

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最終更新:2019/12/27(金) 10:41
東洋経済オンライン

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