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脳だけでロボット義手をすぐ操作可能に、鍵は「錯覚」による運動感覚【人体とテクノロジー】

2019/12/29(日) 18:05配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

生きた筋肉で動くロボットの開発も、曖昧になる人と機械の境界

 脳からの信号だけで、まるで自分の体のように動かせる義肢(義手や義足)などの研究が、現在、盛んに行われている。2016年には米ピッツバーグ大学の研究チームが、人間の脳からコンピューターを経由して電気信号を送り、ロボット義手を制御する実験に成功した。

【動画】失った腕を動かす感覚を取り戻させるロボット義手

 しかしながら、こうした義肢を実用化するには、高いハードルがいくつか存在する。義肢からいかに情報を受け取るかはそのひとつだ。

 実際の皮膚や筋肉からは、脳へさまざまな信号が送られている。自分の手足がどこにあってどんな動きをしているかがわかるのは、そのためだ。信号をフィードバックできるおかげで、あなたは一部始終をいちいち見なくても、直感的にコップに手を伸ばせるし、頭も洗える。

 だが、こうした手や足が「動いている感じ」、いわゆる運動感覚は、現在の義肢にはない。たとえばモーターで動かせるロボット義手を使っていても、神経が細かく通っているわけではなく、動く感覚を得るのは難しい。

 では、どうすればいいのか。2018年に学術誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)」誌に発表された研究が、ひとつの解決策をもたらすかもしれない。カギは巧妙につくりだされる「錯覚」だ。

 錯覚で「手を開いたり閉じたりするときの直感的な感覚を患者に取り戻させることで、『自己』と『機械』を脳が区別する知覚をぼかすことができるのです」と、論文の著者で米クリーブランド・クリニックのバイオニック・インテグレーション研究所のポール・マラスコ所長は説明する。

それぞれの指がどこを向き、何をしているのかもわかる

 失われた手足に錯覚を起こさせるものは、正確に狙いを定めた「振動」だ。

 そもそも健常者を対象にした従来の研究で、手足の腱をうまく振動させてやると、手足が動いたり回転したりするような錯覚を与えられることがわかっていた。1977年のある研究では、非常に強力な錯覚を生じさせることに成功し、被験者たちは自分の手首がありえない角度に曲がったと感じたという。

 同様の振動が義肢でも効果があるかどうかを確認するため、マラスコ氏のチームは6人の患者について実験を行った。彼らは、従来のロボット義手をコントロールできるように、切断された腕の神経を、近くの筋肉に分布させる手術をすでに受けている。

 研究者たちはまず、小型の振動装置を使って、被験者の腕の神経がある接続部の筋肉を振動させた。そのうえで、被験者がどのような手の動きとして感じているかを、もう片方の手で再現してもらった。すると驚いたことに、被験者たちは、失われた手が合計22種類の動きを行うのを感じていた。そのすべてが、振動が作り出した錯覚なのだ。

「うまくいったとしても、手首の動きのような、関節1つか2つ分の簡単な動きだろうと思っていました。ところが蓋を開けてみると、複数の指が連動した、手全体の複雑な動きを感じていたのです。被験者はそれぞれの指がどこを向き、何をしているのかをわかっていて、面白い形に手を握っていると感じていました。本当に驚きました」。マラスコ氏はギズモードのインタビューに対しこのように語った。

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最終更新:2019/12/29(日) 18:05
ナショナル ジオグラフィック日本版

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