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15年間植物状態の男性の意識が回復、定説覆した電気刺激療法【人体とテクノロジー】

1/3(金) 18:03配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

下半身まひの患者は電気刺激で歩行可能に

 植物状態が1年以上続いた場合、回復の見込みはないとこれまで考えられてきた。

 だからこそ、自動車事故後に15年間植物状態だった男性が意識を取り戻したというニュースは驚きを持って受け止められた。脳は、そのように機能するはずがないのだ。

ギャラリー:パーキンソン病の電気刺激はじめ、「医師たちにもよくわからない」治療法など

 フランスの研究者が、ある装置を35歳の患者の胸部に埋め込み、首を通り腹部まで伸びる脳神経「迷走神経」に電気を流し刺激した(VNS)。この刺激療法を毎日1カ月間続けた結果、あらゆる望みが断ち切られていた男性は、驚くべき回復を見せた。この研究は学術誌「Current Biology」に発表された。2017年のことだった。

 この治療法に関してわかっていることや、植物状態の患者にとってどのような意味を持つかなどを紹介しよう。

◆植物状態とはどのような状態か

 植物状態にある人間は自力での呼吸が可能で、目を覚ましたりすることもある。だが、周囲の状況を認識できず、意思疎通もなく、外界からの刺激に反応する意識もない。フランスのリヨンにあるマルク・ジャンヌロー認知科学研究所所属で、今回の研究を率いたアンジェラ・シリグ氏は、「意識がこの世に存在しない状態」と説明する。覚醒と意識が完全に切り離されている状態とも言える。

 対して、意識がなく、覚醒もしていないのが「昏睡」状態で、この場合は回復して完全に意識を取り戻せることがある。また、意識がしっかりあるのに、意思疎通を取る能力が失われた状態は「閉じ込め症候群」と呼ばれる。

◆男性は15年経って突然意識を回復したのか

 そうではない。テレビドラマのように劇的なものではなかったが、その回復には目を見張るものがあった。1カ月にわたって迷走神経を刺激した後、男性は首を右から左へ動かすというような、簡単な指示に反応するまでになった。専門的には、ごくわずかだが確実に意識が認められる「最小意識状態」に移行したといえる。

 セラピストが本を朗読しているのを聞けば、以前よりもずっと長い時間目覚めていることができる。また、脅威を察知して反応もする。誰かが突然目の前に顔を近づけた時に、目を大きく見開いたという。植物状態の患者は、そのように個人のスペースが侵されても、何の反応も示さない。男性の回復は、脳の画像でも確認された。

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