ここから本文です

「睡眠薬を飲みすぎると認知症になる」は本当か? その実例

1/3(金) 13:01配信

現代ビジネス

一気に症状が現れる

 83歳の父親を持つ、若井みち子さん(60歳、仮名・以下同)が語る。

 「父が『夜眠れなくて何度も起きてしまい、つらい』と訴えるので、病院で睡眠薬を出してもらいました。当初は、よく眠れるようになったと父も喜んでいたんですけど……」

名医20人が自分で買って飲んでいる「市販薬」実名リストを公開!

 若井さんの父親が飲んでいたのは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬のハルシオンという非常に効果が鋭い薬だ。

 「飲み始めて、1年ほど経った頃から異変が出てきました。もともとは快活だったのに、だんだんと笑顔がなくなり、口数も減ってきた。

 睡眠薬が抜けきっていないのか、日中もボーッとしがちで、物忘れも激しくなり、突然、怒り出すことも増えました。

 睡眠薬をやめさせようかとも考えましたが、薬を飲まないと夜中に暴れ出して手が付けられなくなるため、仕方なく飲ませ続けているのですが……。家族としては、睡眠薬が認知症の引き金になったと思っています」(若井さん)

 眠れないからと、ついつい軽い気持ちで睡眠薬に手を出したばかりに、認知症を発症する――。

 実際、本誌が、医師や薬剤師、介護施設のヘルパー、認知症の親を介護する家族などに取材をしたところ、「睡眠薬を飲んでから認知症になった」という実例が次々と出てきて、その数は優に50を超えた。

 詳しい事例を紹介する前に、まずは睡眠薬にどのような種類があるのか確認しよう。
病院で処方される睡眠薬は、大きく2種類に分類される。

 一つは、冒頭にも紹介したハルシオン、ドラール、サイレースなどのベンゾジアゼピン系=「BZ系」。もう一つが、マイスリーやルネスタなどの「非BZ系」だ。

 BZ系のほうが、効果が強い反面、副作用も強く出やすい。

 一方で非BZ系は、効果がマイルドで副作用も少ないが、短時間しか作用しないので、夜中に目が覚める中途覚醒や不眠の場合、効果が得られにくいというデメリットがある。そのため、手っ取り早いBZ系を処方する医師も少なくない。

 BZ系の抗不安薬・デパスやソラナックスなどを睡眠薬として、処方されている人もいる。

 睡眠薬の使用率は高齢になるほど上昇し、60代では12%、70代で19.2%、80歳以上で24.8%となる。

 意外にも女性のほうが使用率が高く、70歳以上の女性では4人に一人が服用している(データは'04年、国立保健医療科学院より。現在はさらに増加している可能性が高い)。

 気になるのは、本当に睡眠薬が認知症の要因となるかだが……。

 '14年、世界的な医学雑誌『BMJ』にこんな論文が掲載された。カナダの研究グループが8980人を対象に調査したところ、「BZ系の睡眠薬を3ヵ月以上使用した人は、そうでない人と比べ、1.5倍アルツハイマー型認知症になる確率が高かった」という結果が出て、世界に大きな衝撃を与えた。

 メモリークリニックお茶の水院長で、東京医科歯科大学医学部附属病院特任教授の朝田隆氏は、こう語る。

 「睡眠薬(抗不安薬を含む)と認知症の研究は、世界的にも現在進行形の分野であり、まだはっきりとした因果関係は証明されていません。

 しかし、私は37年の医師人生の中で、『睡眠薬が潜在的な認知症患者の最後の一押しをする』事例をいくつか体験しています。

 認知症は一度発症すると、完全に治ることはありません。だからこそ、いかに踏みとどまれるかが重要なわけですが、睡眠薬を飲むことで、それまで抑えられていた認知症の症状が、一気に表に現れることがあるのです」

 本誌の取材でも、長期間睡眠薬を飲み続けてきた人ほど、認知症になる確率が高くなっている傾向が見受けられた。いくつか実例を紹介しよう。

 ●74歳女性、長時間作用型のダルメート(BZ系)を2年間服用して以来、料理の味付けがおかしくなった(認知症になると味覚が鈍感になる)。

 ●66歳男性、マイスリー(非BZ系)を3年間服用。それほど作用が強くないので、ダラダラと大量に飲み続けた結果、記憶力が低下し、何度も同じものを買ってくるなど、認知症の症状が出てきた。

 ●80歳女性、中時間作用型のユーロジン(BZ系)を5年ほど常用している。覚醒後も体がだるく、気分が落ちこむことが増えた。部屋の片づけができなくなり、身の回りのことに無頓着になった。もともとは社交的だったのに、引きこもりの状態が続いている。

1/3ページ

最終更新:1/3(金) 13:01
現代ビジネス

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ