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家賃滞納70代独居老人を「強制執行」で追い出そうとしたが…

1/7(火) 9:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

強制執行後、そのまま路上で死亡する可能性が高い⁉

建物明渡の強制執行の流れですが、裁判所へ申し立てした後、強制執行を担当する執行官と建物訪問日時の打ち合わせをします。

その後、打合せした訪問日時に、執行官、強制執行の立会人、執行補助業者、債権者である貸主が建物を訪問し、室内を確認します。たいていは、債務者がまだ建物に居住していることがほとんどのため、執行官は、その訪問した日から約2~4週間後を第2回目の訪問日時に設定し、その第2回目の訪問日時に建物明渡の強制執行を行うことを、債務者が在宅中ならその場で告げ、また合わせて室内にその内容を記載した文書を貼りつけて、建物から去ります。これを、建物明渡の強制執行の催告と呼びます。

なお、もしこの第1回目の訪問時に、室内に居住の様子や出入りの様子がないと執行官が判断したときは、この日をもって、建物明け渡しが完了となります。

そして、第2回目の訪問時、第1回目の訪問時と同じく、執行官、強制執行の立会人、執行補助業者、債権者である貸主が建物を訪問し、室内にある荷物を全て撤去します。これを、建物明渡の強制執行の断行と呼びます。

今回のケースに戻りますが、11月下旬、執行官と、強制執行の立会人、執行補助業者、鍵開錠技術者と一緒に建物を訪問しました。

執行官が、まず玄関ドア横のインターフォンを押し、「ピンポン」という音が室内に鳴りましたが、何の応答もありません。留守か、居留守かどちらかはわかりませんが、執行官が大声で呼びかけても、相変わらず室内から応答はありません。

そのため、玄関ドアの鍵を、鍵開錠技術者が開けますと、玄関ドアにチェーンロックがかかっていましたため、「借主Tは在宅中で、ただ単に居留守をつかっているだけだな」と、その場にいた全員が思ったのですが、玄関ドアの隙間から、執行官が「すみません! 借主Tさん!!」と大声で何度も呼びかけたにもかかわらず、応答は全くありません。

借主Tは、70代の男性で、世間一般では高齢といわれる年代のため、室内での孤独死ということも考えられます。そのため、玄関ドアのチェーンロックを開錠し、不安を感じながら、室内へ入って行きます。

建物は、20㎡弱のワンルームマンションでそれほど広くはないため、廊下を抜けると、布団の中で寝ている借主Tがすぐに見つかりました。ちょうど11月下旬の寒い時期なので、風邪でもひいて寝込んでいるだけだろうと、その場にいた一同、安心したのですが、借主Tの顔をよく見てみると、単なる風邪ではないことがひと目でわかりました。

借主Tの顔は真っ赤に火照り、目の周りは赤黒く大きく腫れ上がっていて、目が見えていないのではというくらいの状態です。どう見ても重い病気にかかっているようにしか見えません。執行官が借主Tへ、今日訪問した事情を説明するべく話しかけるものの、借主Tは布団から上半身を起こすことがやっとで、立つこともできない、そんな状況です。

すると執行官は借主Tへ、「1ヵ月後の12月〇〇日に、強制執行しますので、それまでに出ていってくださいね。もしまだ部屋の中にいらっしゃっても、中の荷物を全部出しちゃいますからね」と冷静に言い放って、「12月〇〇日に強制執行をする」という内容の文書を、居室スペースの壁に両面テープで貼り付け、室内から立ち去って行きました。

私も、そんな執行官のやり取りを傍で見ていたのですが、建物の前の道路で、執行官からこんなことを言われます。

「もしこの債務者さん(=借主T)、このままの状態ですと、1ヵ月後の強制執行はできませんね。」

通常、建物明渡の強制執行の断行時、もし債務者が室内にいた場合、執行官の判断で債務者を外へ出すことができます。ただし、今回の借主Tの場合、強制執行の断行時に、無理やり外へ出した場合、そのまま路上で死亡する可能性が非常に高いとして、「そういうことが事前に分かっている場合、強制執行はできません。」と執行官から言われます。

さて、この借主T、重い病気にかかっており、治る見込みもなさそうなので、このままいきますと、1ヵ月後の強制執行ができません。その後、もし、借主Tが室内で亡くなると、これは最悪のケースです。

私は、執行官から「このままの状態だと、1ヵ月後の強制執行ができない」と言われました。では、「このままの状態」ではないようにすれば良いのでは? と考え、強制執行前に、借主Tがこの建物からどこかへ引っ越していれば、強制執行はできるはずです。どうしようかといろいろ考えましたが、まずは区役所へ相談し、借主Tの転居先を斡旋してもらうことにしました。

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最終更新:1/20(月) 14:45
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