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古今東西 かしゆか商店【有松絞りの手拭い】

1/8(水) 0:00配信

Casa BRUTUS.com

日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回の目的地は愛知県の有松。江戸時代の趣が残る町を訪ね、熟練の指先からつくり出される美しい絞り染めと出会った。

かしゆか商店を始めてから思うのは、「こんなに美しい手仕事を、なぜ今まで知らなかったんだろう」ということです。今回出会った有松絞りは、愛知県の有松で約410年続いてきた絞り染め。絞り自体は世界中にありますが、模様や技法の多さは有松が世界一。今も江戸時代の建築が多く残るこの町は、絞りの聖地と呼ばれています。

「参勤交代で東海道を通る大名が、有松絞りの手拭いや浴衣を土産にしたことから全国に広まったんです。その人気は北斎や広重の浮世絵に描かれたほどでした」

と話すのは、17世紀初めに創業した〈竹田嘉兵衛商店〉の竹田昌弘さんです。有松絞りの特徴は、生地にシワやヒダを寄せ、糸で絞ったりくくったりしてから染めること。この「絞り・くくり」が難しく、しかもバリエーションは60種類以上。ゆえに有松の職人は、一人が1種類の技だけを極める「一人一芸」を貫くそうです。

この日いらした松岡清子さんも、「竜巻絞り」という技を継承する伝統工芸士。有松で唯一というその技を見せてもらいました。

道具は60年以上使っているV字形のくくり台のみ。そこに掛けた反物を霧吹きで濡らし、親指と人差し指でプリーツ状に折り畳みながら、糸で巻き留めていきます。

「下絵はないんですよ。頭の中で仕上がりをイメージしながら、指先の勘だけでヒダを折るんです」

と松岡さん。シャッシャッと音をたてながら細かく畳んだ生地を親指でしごき、筋目をつけていきます。ふと見ると、松岡さんの指の腹が驚くほどつるつる!

「いつの間にか指紋の溝がなくなってしまった(笑)。笑いごとじゃない? でもイライラしたままくくると出来上がりがキツくなっちゃう。笑いながらくくれば穏やかな絞りができる気がします」

1反くくるのに1年かかることもあるという作業が終わった後は、染色、糸抜き、仕上げという工程を経て着物などに仕立てられます。その美しく可憐なことといったら! 藍染めもモダンだし、淡い黄色やピンクの訪問着はため息が出るほど素敵。それを見てこっそりと思いました。この綺麗な絞りが若い人でも買いやすいアイテムになったらな、と。例えば白やグレーのリネンに白で絞りを入れたシーツや、絞りの靴下。あれこれ想像しながら今回買い付けたのは、伝統柄で染めた手拭い。美しい絞りを手軽に楽しむ第一歩です。

photo_Keisuke Fukamizu editor_Masae Wako

最終更新:1/13(月) 0:40
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