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なぜ死刑でない? 仮釈放も? 新幹線殺傷被告「無期懲役」に疑問の声、弁護士に聞く

1/10(金) 6:10配信

オトナンサー

 東海道新幹線の車内で乗客3人を殺傷したとして、殺人罪などに問われた小島一朗被告(24)に言い渡された、無期懲役の判決が1月7日、確定しました。裁判員裁判が行われた横浜地裁小田原支部によると、控訴期限の1月6日までに検察側、弁護側双方が控訴せず、確定したとのことです。

「一生刑務所に入るため」に、偶然乗り合わせた他人を無差別に殺害し、判決後、望み通りの無期懲役と聞いて万歳三唱をした被告に対し、ネット上では「なぜ死刑にならない」「求刑より重い罪にできないの?」「何年で仮釈放されるんだろう…」といった疑問の声が上がっています。死刑判決の基準や、無期懲役となった後の仮釈放の可能性について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

殺人の被害者が1人でも死刑に

Q.裁判で、死刑判決が出る可能性がある罪を教えてください。

牧野さん「刑法上は、以下の罪に『死刑』が法定されており、死刑判決を受ける可能性があります。このうち、『外患誘致罪』は、外国と通じて日本に武力行使をさせた罪、『外患援助罪』は、日本に武力行使する外国に加担して軍務に服するなどしたときの罪です。117条の『激発物』とは火薬などのことです」

・内乱罪(77条1項:首謀者のみ)
・外患誘致罪(81条:法定刑が死刑のみの罪)
・外患援助罪(82条)
・現住建造物等放火罪(108条)
・激発物破裂罪(117条)
・現住建造物等浸害罪(119条)
・汽車転覆等致死罪(126条3項)
・水道毒物等混入致死罪(146条)
・殺人罪(199条)
・強盗致死罪・強盗殺人罪(240条後段)
・強盗・強制性交等致死罪(241条3項)

Q.裁判で死刑判決が出る目安、基準はあるのでしょうか。

牧野さん「1968年に起きた『永山則夫連続射殺事件』で1983年7月、最高裁判決が示した基準があります。一般に『永山基準』と呼ばれますが、以下に示す9項目を総合的に考慮し、他事件との刑のバランスなどの観点から『やむを得ない』ときに死刑の選択が許されるとしたものです。

なお、『殺害された被害者の数』が基準の一要素となっていることから、『死刑は2人以上殺害の場合』と思っている人もいるようですが、殺害された人が1人でも、保険金や身代金目的の殺人犯には死刑判決が出る場合が多いです」

(1)犯罪の性質
(2)犯行の動機
(3)犯行態様、特に殺害方法の執拗(しつよう)性、残虐性
(4)結果の重大性、特に殺害された被害者の数
(5)遺族の被害感情
(6)社会的影響
(7)犯人の年齢
(8)前科
(9)犯行後の情状

Q.今回の新幹線殺傷事件で、死刑判決が出なかったのはなぜだと思われますか。検察も死刑ではなく、無期懲役を求刑しました。

牧野さん「検察側は求刑に関し『生育環境や前科前歴がないこと、人格障害などを考慮する必要がある』としていたようで、これが判決にも影響したと思われます」

Q.求刑を上回る判決を出すことはできないのでしょうか。実例があれば教えてください。

牧野さん「刑事訴訟法293条1項には『証拠調べが終わった後、検察官は、事実および法律の適用について意見を陳述しなければならない』とあり、求刑は単なる、『検察官の意見』です。裁判所はその意見に左右されずに、法定刑の範囲であれば、自由に刑を決めることができますので、求刑を超える判決を言い渡すことは可能です。

他人の飼い猫を虐待して殺したとして、器物損壊と動物愛護法違反の罪に問われた富山市の被告に対し、富山地裁高岡支部が2019年9月、『動物愛護に対する意識が社会の中で近ごろ高まりつつある』と指摘し、求刑(懲役6月)より重い懲役8月、保護観察付き執行猶予4年の判決を言い渡した裁判例があります」

Q.被告は判決後に万歳三唱をしました。判決後の行為は、裁判にはもう影響しないのでしょうか。

牧野さん「判決後の行為の効果は法律上規定されておらず、控訴審の審理へも基本的には影響しませんが、仮に控訴審があったとすれば、責任能力の有無への影響はあり得たと思います」

Q.無期懲役は終身刑ではありません。何年くらいで仮釈放になることが多いのでしょうか。

牧野さん「無期懲役刑は、一般に考えられるより重い刑罰です。2009年の法務省通達で、刑の執行開始から30年が経過した後1年以内に、独自に地方厚生保護委員会が仮釈放を許すか否かの審理を開始することになっています。ただし、簡単に仮釈放されるというわけではなく、審理では本人との面談や被害者などの意見聴取もなされるので、更生が不十分だったり、悪い犯情(犯罪に至るまでの事情)だったりする受刑者は仮釈放が許されない可能性が高いです」

Q.小島被告は「出所したらまた殺す」と発言しているようです。仮釈放させて、もしまた殺人を犯したら、仮釈放を判断した人や、今回無期懲役にとどめた検察官、裁判官は何らかの責任を問われないのでしょうか。

牧野さん「先述通り、仮釈放の審理の時点で慎重に検討されるので、更生が不十分であれば仮釈放が許されない可能性が高いです。また、刑事裁判に関与した検察官や裁判官の責任は、審理との因果関係がないので問われないと思います」

オトナンサー編集部

最終更新:1/10(金) 9:55
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