ここから本文です

高校ラグビーの、W杯とは違う味わい。王者・桐蔭の「個が際立たない」強さ。

1/10(金) 19:01配信

Number Web

 この場に覇者は決するのだ。だから、記者であれ実況解説者であれ、伝える立場の者は攻防を象徴するシーンを見つけて、書いたり話したいと願う。

【秘蔵写真】花園でも凄かった桐蔭学園の松島幸太朗、新潟工でゴリゴリの稲垣、ヒョロっとしたリーチに赤黒を纏う五郎丸…ラグビー選手の若き日。

 全国高校ラグビー大会の決勝。後半の23分24秒、そのまま25、26秒のあたり。あった。そんな場面が。

 15-14。最少スコアを先行の桐蔭学園がラックを重ねて攻める。御所実業高校はそれが身上である集団的防御で阻む。オールブラックスのFWの結束を表す古典的なたとえなら「1枚の黒い毛布」が楕円球をくるもうとする。この大会でずっと光を放った「ゴセのターンオーバー」の機会到来、複数が低く上体をねじ込んでラッシュをかけた。

 奪うか。

 数分後に響く終了の笛に腕突き上げたのは桐蔭学園だった。つまり奪えなかった。

勝負を分けた接点での激突。

 桐蔭学園も「接点という競技」の常なる王者である。才能の大いに注目された背番号10、伊藤大祐までが、いまここが踏ん張りどころと、普段の働き場である設計室から建設現場へ身を投じて、からくもボールをプロテクトする。やや下げられたラックより右へ。大物ロック、青木恵斗が強さと巧さのカクテルであるオフロードを実行、14番の西川賢哉がインゴールへ躍り込んだ。

 御所実業にすれば勝負をかけた接点で奪い切れず、その分、外の防御の厚みと集中力をなくした。得失点の推移、残り時間、そして、なにより両校のひとりひとりをファイナリストたらしめた接点での激突という観点において、まさに勝負の分かれ目だった。

個が際立たない桐蔭ラグビー。

 準決勝の桐蔭学園を凝視して「個が際立たない」と感じた。悪口ではない。だれかが際立つ必要もなく、そこに登場する選手のすべてが淡々と、なお力強く務めを果たす。JSPORTSの放送解説をしながら、劣勢の東福岡高校の選手の名のほうをむしろ繰り返した。桐蔭はひたすら「桐蔭というラグビー」を貫くのだった。

 ちょうど10年前、花園で準優勝直後の桐蔭学園の藤原秀之監督に技術誌掲載のためのインタビューをした。絶えぬ学習と進歩を生きる指導者にすれば、ただの昔話だろうが、今回の栄冠へつながる慧眼は随所に示されていた。いわく「1対1からは逃げられない」。いわく「ボール・スキルの練習にジャッジ(判断)の要素を組み合わせる」。スポーツの現場の常套句である「芯」や「幹」を表層でなく文字通りに鍛えながら、個の判断力、チームのラグビー理解を深める。

1/3ページ

最終更新:1/10(金) 19:01
Number Web

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ