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多額の年金をおろせない…「認知症の父」が母を号泣させるまで

1/11(土) 9:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

多くの中高年が直面する「親の介護」問題。老人ホームへの入居に抵抗を持つ人も多く、「親の面倒は子どもが見るべき」と親族一同考えがちだ。しかし、フリーライターの吉田潮氏は、著書『親の介護をしないとダメですか?』(KKベストセラーズ)にて、「私は在宅介護をしません。一切いたしません」と断言する。親孝行か、自己犠牲か。本連載では、吉田氏の介護録を追い、親の介護とどう向き合っていくべきか、語っていく。

認知症で「家族の苦しみ」がわからなくなった

◆父、生活業務一切不能に

父と母は年金暮らしだ。父名義の口座から母が生活費を引き出す。一企業に長年勤めあげた父は、厚生年金と企業年金で、それなりの額を受け取っている。が、2016年3月に父は銀行のカードをなくし、印鑑の場所や暗証番号もわからなくなった。

父を銀行に連れて行くも、らちが明かない。母はとうとうキレてしまったという。「しっかりしてよ。どんどん頭おかしくなってるじゃない!」と怒鳴った。

すると父は、「どーんどーんパァーンパーンどーんパァーンパーン♪」と、ドンパン節を歌ったのだ。もともと父は天邪鬼(あまのじゃく)というか、旅先の静寂かつ神聖な場所でわざと放屁するような困った男だった。でも家族を経済的な困窮に遭(あ)わせたことは一度もない。おそらく父はいつものようにふざけたのだ。

ところが、生活費をおろせなくなる恐怖と不安を抱えた母は、夫の不甲斐ない姿に愕然とした。怒りを通り越して泣けてきたという。母は車の中で号泣した。

認知機能が低下し、生活に支障をきたすのが認知症だ。銀行でお金をおろせなくなったのは明らかに支障である。姉から聞いた話では、高速道路で期限切れのクレジットカードを使おうとして渋滞を起こし、通行料金の値上げのせいだと狂ったように主張したこともあったという。姉は認知症専門医に見せたほうがいいと考えていたようだ。

でも、病院で認知症の検査は受けていない。検査にどれくらい意味があるのか、私にはわからない。認知症と診断されても、特効薬があるわけでもない。軽度認知障害なら薬で進行を止められると聞いたことはあった。ただ、父は降圧薬など5種類も服用中なので、これ以上薬漬けにしたくない。

今思うと、検査を受けさせるべきだったのか? 世の中はそんなにきっちり線引きするものなのか? 介護認定は早めに申請すべきだが、認知症と断定すべきかどうかはケースバイケースではないかと思う。

つまり、父は正式には認知症ではない。でも、「自立不能な人」であることを家族で認識して、共有した。それでいい。ちなみに預貯金は無事で、母がすべて管理することになった。

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最終更新:1/31(金) 8:09
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