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テレビを見るほど肺がんになる!? 麻雀に死亡リスク!? 世界の最新「医学論文」を紐解く

1/11(土) 11:01配信

デイリー新潮

世界の最新「医学論文」を紐解く――倉原優(1/2)

 帰宅後につい見てしまうテレビ、出勤時に結ぶネクタイ、認知症予防によいと聞いて始めた麻雀――。最新の研究によって、何気ない日常に潜むリスクが次々と明らかに。呼吸器内科医である倉原優氏が、身近にある「命の危機」を医学論文から読み解いていく。

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 私は、普段から国内外の医学論文を読んでいる内科医です。医学論文というのは、病気の診断や治療法について、新しい知見を世に知らしめるための研究を記したもの。しかし、世の中にはビックリするような医学論文が存在します。今回は、読者のみなさんの生活に密着した、オドロキの医学論文を紹介しましょう。

テレビを見るほど「肺がん」になる

 この数年、「テレビの視聴時間が長いと健康によくない」という知見が広まりつつあります。

 たとえば、「テレビの視聴時間が長いほど肺がんのリスクが高くなる」という北海道大学の医学論文があります(1)。5万4258人の男女をアンケートで「1日2時間未満」、「1日2~4時間」、「1日4時間以上」の3つに分類したところ、1日4時間以上テレビを視聴する男性は、1日2時間未満の人と比較して肺がんを発症するリスクが1・36倍高いという結果が得られたのです。同じ北海道大学の別の論文では、1日5時間以上テレビを見ている女性は、1日2時間未満テレビを見ている女性よりも卵巣がんになるリスクが約2倍高かったと報告されています(2)。

 テレビとがんに何の関係があるの? と思われる読者も多いでしょう。実は、テレビ視聴時間が長いと座っている時間が長くなるのです。「座っている時間はどのくらいですか?」と聞いても正確な回答が得られないので、医学論文の世界では、相関のよいテレビ視聴時間がよく用いられているのです。

 アメリカの研究によると、日本人は世界一座っている時間が長いそうです(3)。世界20カ国の平均が約5時間だったのに対して、なんと日本人は約7時間でした。1年間で100日以上座っている計算になります! 

 座っている時間が長いと、医学的に何が問題なのでしょうか? これは、裏を返せば、運動時間が少ないということです。多くのがんは生活習慣病の延長にあります。そのため、運動不足によってがんにかかるリスクが上昇してしまう可能性があるのです。また、長時間膝を曲げてジッとしていると、血液がドロドロになって固まります。それが心血管疾患を誘発する可能性もあります。

 座っている時間が長いと健康に害をもたらすため、“Sitting is the new smoking(座ることは新しい喫煙だ)”という言葉も生まれました。これは、オーストラリアのシドニー大学の報告がきっかけです(4)。この研究は、45歳以上のオーストラリア人の座っている時間と死亡リスクの関係を調べたものです。1日の座っている時間が0~4時間の人と比べると、11時間以上座っている人では死亡リスクが男性で1・32倍、女性で1・62倍になるという結果でした。

 世界各地から報告された、複数のこういった論文を集めて解析したところ、日中座っている時間が長いと、がん全体の死亡リスクを17%、心血管疾患による死亡リスクを18%上昇させるという結果が得られました(5)。この結論は世界的に有名な医学雑誌に掲載されたもので、信頼度が高い内容です。

 ただでさえ座っている時間が長い日本人は注意しなければいけません。パソコン仕事をしている人は、1時間に1回くらい立ってストレッチをするよう心がけてください。

 ちなみに、特定の臓器のがんが危険というわけではなく、先ほどの肺がんをはじめ、大腸がん、前立腺がんなどありとあらゆるがんの死亡リスクが上昇することが分かっています。普段からタバコを吸っているような人が、運動もせずに家でダラダラ過ごすのは、自らがんのリスクを加速度的に大きくしているということです。

 家でぐうたら寝ている夫に向かって「そんなにテレビばっかり見ていると、あんた死ぬわよ!」と一喝する妻も出てくるかもしれませんね。

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最終更新:1/11(土) 11:01
デイリー新潮

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