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ポルシェ911(タイプ993)の熟成された秘伝の”空冷”を楽しもう──連載「ココロに効くクルマ選び」

1/12(日) 21:41配信

GQ JAPAN

時代が進むにつれ、流れについていけず振り落とされたクルマたちがいる。しかし、そこにはその環境・その時代につくられたからこその魅力がある。今回紹介するココロに効くクルマ、ポルシェ911(タイプ993)はまさにそんな魅力がつまったクルマだ。ポルシェが熟成させた、空冷の味を楽しもう。

【写真を見る】なぜ993は高騰したのか

抜群の知名度を誇る

郊外や地方都市に住まうのであれば話は別だ。しかし東京あるいはそれに準ずるような都市に住まう者にとって、「実用」を主たる目的にクルマを所有する意味はさほどない。

そんな状況下で「それでもあえて自家用車を所有する」というのであれば、その際は何らかのアート作品を購入するのに近いスピリットで臨むべきだろう。

すなわち明確な実益だけをそこに求めるのではなく、「己の精神に何らかの良き影響を与える」という薄ぼんやりとした、しかし大変重要な便益こそを主眼に、都会人の自家用車選びはなされるべきなのだ。

そう考えた場合におすすめしたい選択肢のひとつが、カーマニアからは「キューキューサン」と呼ばれることが多い4世代前のポルシェ911(993型)だ。

カーマニア諸兄には今さらな話かもしれないが、必ずしもカーのマニアとは限らないGQ読者各位のため、993型ポルシェ911というクルマについてまずはごく簡単にご説明しよう。

最後の“空冷”

ポルシェ911というクルマは、もともとは「空冷式」のエンジンを採用していた。

現在でこそクルマのエンジンは水冷式が当たり前となっているが、ポルシェ911が誕生した1960年代前半は、まだまだ空冷方式も一部で採用されていた。ちなみに1960年代のニッポンで売れまくった「てんとう虫」ことスバル360のエンジンも空冷式だ。

その後は世の自動車のほぼすべてが水冷式エンジンへと「転向」していくなか、ポルシェ911だけは空冷方式にこだわり続け、バタバタとうるさい音を立てながら働く空冷式の水平対向6気筒エンジンを、そのボディ後端にマウントし続けた。

だが1990年代も半ばになると、さすがのポルシェも空冷にこだわることが難しくなってきた。

空冷方式のエンジンには「軽量かつシンプルに作れる」というメリットはある。だがエンジン性能の向上とともに増大していくいっぽうの発熱量を空気で制御するのはやはり限界があり、また厳しくなっていくばかりの排ガス規制をクリアするにも、空冷方式はきわめて不利だった。

そのため1990年代半ば、ついにポルシェは30年以上にわたって「秘伝の熟成」を重ねていた空冷エンジンを断念。代わりに、一般的な水冷方式のエンジンを採用した996型ポルシェ911を1997年に発売した。

で、その直前まで販売されていた「最後の空冷911」が、今回推したい993型ポルシェ911なのだ。

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最終更新:1/12(日) 21:41
GQ JAPAN

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