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肺炎予防に音楽!? ドイツで行われた「腹上死」大研究… 世界の最新「医学論文」を紐解く

1/12(日) 11:01配信

デイリー新潮

世界の最新「医学論文」を紐解く――倉原優(2/2)

 肺炎予防に音楽が効く? フィットネスジム通いは続かない? 気になる「腹上死」の大研究……呼吸器内科医の倉原優氏が、世界の医学論文から身近な「命の危機」を読み解く。

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「誤嚥性肺炎」予防に音楽? 

 ところで、日本人の死因の第5位は「肺炎」です。社会の高齢化がすすむ中、特に気を付けなければいけないのは誤嚥(ごえん)性肺炎です。食べ物や口中の菌が誤って肺に入ってしまう誤嚥によって生じる肺炎で、誤嚥は誰にも起こりうる老化現象です。近年、誤嚥を防止するために「肺を鍛える」というのが流行っています。医学的根拠は決して明確ではないのですが、いろいろなやり方があります。個人的には、てっとり早く肺を鍛えるなら管楽器を演奏するのがいいのではないかと思います。

 たとえば、クラリネットなんてどうでしょうか? 15人のクラリネット奏者の血液データや心電図を評価した珍しいドイツの研究があります(9)。若い奏者ではかなり運動量が多いことが分かり、激しい運動をするのと同じくらいの仕事量だったそうです。クラリネットのような大きな管楽器は、楽器内の空気抵抗が大きく、頸部の運動と肺の拡張にかなり筋肉を使うため、見かけよりも運動量が多いのです。毎日クラリネットをやっていたら、誤嚥も予防できそうです。管楽器はクラリネットでなくてもかまいません。近所迷惑が気になる人は、弱音器(ミュート)を付ける方法もあります。

 また、音楽そのものにリラックス効果や抑うつを防止する効果がありますので、閉じこもりがちな中高年の人に対して、私は音楽をすすめています。老人ホームやデイサービスなどでリトミックを取り入れた健康体操がおこなわれているのは、そういう理由からです。

 体操といえばこんな話も。

 ライザップも流行っていることだし、ここはセオリー通りフィットネスジムに通おうと思い立ったあなた。しかし、本当にそのジム通い、続けられますか? 

 ブラジルから興味深い医学論文が出ています(10)。フィットネスジムに通っている人が、一体いつまで継続できるかを調べたものです。リオデジャネイロ都市部の研究なので、お金持ちが対象になっています。2005年1月~2014年6月に、フィットネスジムの新規会員となった5千人以上の来店記録をチェックして、ジム通いがどのくらい続けられたか調べました。すると、新規会員になった人の63%が3カ月以内にジム通いをやめてしまうという驚きの結果が。なんと意志の弱いことか! そしてジム通い継続率は、半年後13・6%、1年後だとわずか3・7%にまで減少しました。やる気あんのかよ、というレベルです。9割以上が通わなくなるのですから、安易にジム通いを決断しないように! 

 ジムに通ってマッチョになって……とムキムキ姿の自分を想像している人も多いでしょうが、実はボディビルダーはすごく筋力があるわけではないようです。英国のとある研究で、12人のボディビルダー、6人のパワーアスリート、14人の一般人の筋線維の強さを調べました(11)。普通に考えると、ボディビルダーが最強かなと思うのですが、そう簡単な話ではありません。筋線維の断面積を調べるとボディビルダーのそれは肥大していることがわかったのですが、筋線維あたりの筋力に関しては、パワーアスリートより62%、一般人より41%低いことがわかりました。ボディビルダーのほうが総合的な力が強いというのは間違いないのですが、筋線維あたりで計算すると「筋肉はゴツイけど筋力は弱い」というのが妥当な表現のようです。

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最終更新:1/12(日) 11:01
デイリー新潮

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