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スマホ5G 速度100倍で「モノづくり」日本の逆転劇はあるか?

1/13(月) 11:03配信

FRIDAY

次世代移動通信システム「5G」の時代がついにやってくる。データ転送速度はこれまでの約100倍で、「第二のIT革命」が起きるとまで言われる。

agbee、多地点高臨場遠隔合奏、ハイパー・ドクターカー…5Gの影響は全産業へ

「第5世代モバイル推進フォーラム」でアプリケーション委員長を務め、5G向けアプリについて研究するインフォシティ社長の岩浪剛太氏が話す。

「エンターテインメントや働き方、医療、教育、農業、工業、インフラなど、すべての分野が5Gの影響を受けるでしょう。むしろ、5Gでこれまでの方法が変わらなければおかしい」

たとえば、スポーツ観戦の可能性が広がる。試合は複数の4Kカメラで撮影され、視聴者は手元のスマートフォンを操作して、自分の好きな視点に切り替えながら観ることが可能になる。スタジアムでの観戦時、手元のスマホで審判の目線から捉えた映像を見ることができれば、臨場感は倍増するはずだ。

選手の動きを「体感」することもできるようになるだろう。たとえば、自転車レースを実際に走る選手の視点から見た映像をリアルタイムで自宅に転送し、トレーニングバイクと同期させれば、プロのレースをバーチャルで体験できる。

◆すべての産業が一変する

NTTドコモ5Gイノベーション推進室の奥村幸彦氏が「新しい音楽ライブ」の形について話す。

「当社はヤマハと共同で、5Gを用いた『多地点高臨場遠隔合奏』の実験を行いました。東京ビッグサイト、東京スカイツリータウン(東京ソラマチ)、福井県の恐竜博物館を5Gの映像と音声でつなぎ、ボーカルとベーシスト、ドラマー、ギタリストが別の会場で歌い、演奏する状態でライブセッションを行ったのです」

5G回線で会場が結ばれ、映像と音が遅延せずに伝わることで、まるで同じスタジオでセッションをしているような白熱のライブとなった。実際に演奏したプロのミュージシャンたちも、「まったく違和感なし」と太鼓判を押す。

この仕組みを応用すれば、『AKB48 全国47都道府県同時ライブ!』といった、メンバー一人ひとりが全国に散らばって同時にライブを行うことも可能になるはずだ。

では、そんなことを可能にする5Gとは、どんな技術なのか。

「5Gの特徴は、何と言っても超高速・大容量であることです。一般向けのスマホでテストしても、1Gbps――すなわち1秒間で約1ギガビットのデータを送受信できます。これはスマホが見えない光ファイバー回線でつながっているようなイメージで、4Kの映像を25本程度、同時に送れます」(岩浪氏)

さらに「多数同時接続」が可能になる。混雑する駅やイベント会場でネットがつながらなくなった経験があるはずだ。しかし、5Gなら大丈夫。国立研究開発法人「情報通信研究機構」によると、5Gなら基地局1台につき、なんと約2万台もの端末を同時接続可能だという。従来の方式だと端末100台程度であっても、一斉に接続を試みると接続不可能となる場合があったのだから、その差は歴然としている。

しかも、データ送信の際に遅延がまったくといっていいほど発生しないというのだ。データ送受信の待ち時間は、従来の10分の1。仮に時速100㎞で走る自動車に遠隔制御でブレーキをかける場合、4Gだったら1.4mほど進んでから減速を始める。しかし、5Gの場合はわずか2.8㎝しか進んでいない段階で自動車の減速が始まる。

◆医療ロボットが実用化へ

これらの超高性能は産業分野でも――というより産業分野でこそ発揮される。まずは救急医療の未来が変わる。

「今まで救急医は、多くの場合、救急車の救急隊員による音声情報のみで状況を判断せざるを得ませんでした。しかし5Gで現場の救急車やドクターカーと救急指定病院をつなげば、診断などに使える4K映像や、各種医療機器で計測された患者の情報が送れます。一刻を争う状況のなか、医師が適切な処置を行うまでの時間を短縮できれば、将来的に5Gによって助かる生命が増えるものと期待されます」(奥村氏)

NTTドコモは、群馬県前橋市や前橋赤十字病院とともに実証試験を実施した。「交通事故被害者の心電図や超音波診断装置(エコー)映像、4K接写カメラの映像などを複数の医師と共有しつつ患者を搬送する」というシナリオで、5Gの有用性を検証した。もし大災害が起きたら被災地とその他の地域を5Gでつなぎ、遠隔地にいるベテラン医師が適切な処置を指示することもできる。

しかも、「超低遅延」だから遠隔操作でロボットに細かい動作をさせることも可能になる。すなわち、ロボットの開発が進めば、将来的には遠隔地からの手術も可能となり、医療の地域格差も縮まっていくはずだ。

遠隔でロボットを操縦できれば、医療だけでなく、介護や工場での作業も劇的に変わっていく。奥村氏が続ける。

「当社はトヨタ自動車とともに、5Gを用いた無線遠隔ロボット操縦のトライアルを実施しました。約10㎞離れた遠隔地からトヨタが開発したヒューマノイドロボット『TーHR3』のスムーズな操縦に成功しました」

上の写真を見てほしい。操縦者が動くと、遠隔地でロボットが同じ動きをする。実験では、ボールを両手で挟んで持つ、ブロックをつまむ、積み上げる、握手をするといった動作を、有線接続時と同様に行うことができた。これによって将来は、遠隔地の人間がロボットを動かして介護を行ったり、危険な作業を行ったりすることが可能になる。

◆一発逆転のチャンス到来

ロボットに限った話ではない。NTTドコモはコマツとともに、5G接続したブルドーザの遠隔操作の検証も行っている。複数のカメラを搭載したブルドーザから5Gで送られた詳細な映像をもとに、遠隔地から制御信号を送って、高精度な整地作業を実現する。整地すべき箇所を設定した「3次元図面」に従って自動制御する機能も有しており、現場の状況に合わせて効率の良い作業が行える。

働き方もこれまでと同じではなくなっていくだろう。複数のブルドーザを遠隔地から動かせば、一人の作業員がいくつもの現場を掛け持ち可能となる。深刻な人材不足を補う切り札となるはずだ。社員の自宅とつなげば、自宅が仕事場となる。複数のモニターとカメラで、自宅に居ながらにしてオフィスにいるような状況をつくりあげることもできるだろう。

5Gが普及すれば、その影響は全産業へと及んでいくのだ。

だからといって、5Gサービスの普及で、日本人にとって「バラ色の日々」がやってくるかと言えば、そういうわけでもなさそうなのだ。常にネット環境にどっぷりとつながっていることをストレスに感じる人もいるだろう。便利になるかもしれないが、これまで以上に外資系IT企業に牛耳られるかもしれない。

前出の岩浪氏がこう話す。

「スマホが登場したことで、ユーザーのライフスタイルが変化し、GoogleやApple、Facebook、Amazonなどのプラットフォーマーが一気に市場を拡大しました。日本はGAFAに支配されているのが現状です。

しかし、5G時代はスマホ以外に、あらゆる『モノ』が高速でネットにつながることになります。そして現在も、日本のモノづくりは大きな力を持っている。産業用ロボットや建設機械、自動車、生活家電などを5Gに対応させることで、日本企業は今までにない『新しいモノ』を創り出すことができるはずです」

5GはGAFAに牛耳られているITの世界で、日本が一発逆転するチャンスなのだ。中国や韓国では5Gはすでに実用段階に入っている。’20年秋には新型『iPhone』が5G対応になることも確実視されている。日本でも今後、スマホが5Gになるにつれ、新しいアイデアが続々と飛び出してくるだろう。

インターネットが爆発的に普及してから、もう四半世紀が過ぎた。パソコンやスマホなど、次々に新しい商品が登場して、私たちの生活を一変させた。そして、5Gの導入で、これまで想像もできなかった商品が出てくることが予想される。そのアイデアを実現する者が、次世代の覇者になるのだ。

『FRIDAY』2020年1月10・17日号より

取材・文:夏目幸明

FRIDAYデジタル

最終更新:1/13(月) 11:03
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