ここから本文です

福島の教訓「想定外」二度と

1/13(月) 19:02配信

Japan In-depth

【まとめ】

・被災による環境変化や帰還の遅れにより、健康課題は増大する。

・被災した東北は課題先進地域であり、日本の将来像。

・福島の経験から学ばなければ「想定外」を繰り返すことに。

私は鹿児島県鹿児島市で生まれ育ち、ご縁あって、現在福島県いわき市で看護師として勤務している。現在、病院勤務の傍ら、福島県立医科大学公衆衛生学講座の修士課程の学生として坪倉正治医師に師事し、福島第一原子力発電事故後の健康問題を調査している。

原発事故後の健康問題に興味を持ったのは、大学時代、友人の誘いで福島県相馬市や南相馬市といった浜通りの医療機関の見学をしたことがきっかけだ。当時、相馬市に支援拠点を構えていた星槎国際高校の尾崎達也先生は、津波が押し寄せた沿岸部から災害の爪痕が色濃く残る場所、お気に入りのお団子屋など、地域の至る所を案内してくれた。

山間部に入るに連れて、次第に高くなるガイガーカウンターの放射線空間線量の数値と車窓から眺める緑溢れる美しい山々のギャップに困惑した。閑散とした町役場を目にして、この地は放射能で汚染されたのだ、と悟った。そして、もし故郷・鹿児島で原発事故が起こったとき、同様のことが起こるのか、とも。

大学卒業後、宮城県石巻市で保健師となった私は、乳幼児健診や赤ちゃん訪問、発達障害児支援に加え、仮設住宅住民への訪問や災害復興住宅入居者への説明会への参加、健康調査、市民向けの健康講話のコーディネートなど様々な保健活動に従事した。また幸いなことに、被災者支援を行う団体や医療従事者の友人も増え、そこから地元の方を紹介していただき、公私ともに石巻について知る機会が増えた。

「買い物以外は外に出歩いたり、人と喋ることもないね。前いたところは友達も多くてお茶っこしていたけど、引っ越してからは全然知り合いもいないから」

「災害復興住宅に入居したけど、お隣の顔が全然見えないの。挨拶もしていないのよ」

「震災前は家族一緒に暮らしてて、息子が病院さ連れて行ってくれてたけど、震災後は離れて暮らすようになった。バスで行くには乗り継いで行かなきゃならないし、タクシーで行くにはお金もかかる。だからと言って、仕事を休んで病院に連れて行ってくれとは言えない」

実際に話す中で感じたのは、震災前、何とか家族や地域の繋がりで維持していた生活が、自然災害によって転居や生活の変化を余儀なくされ、その結果、通院が難しくなった、引きこもりがちになった、といった、目に見えない、しかし確実に日常を蝕む影響だった。

被災地域は、避難や転居で人口が減少し、ヒト、モノ、カネといったリソースが限られ、インフラや医療保健サービスの維持が難しくなる。その中で、どのように健康を維持していくのか。課題は溢れかえっていたが、一人の公務員として何ができるのか、皆目見当もつかなかった。

1/4ページ

最終更新:1/13(月) 19:02
Japan In-depth

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事