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いまこそ知っておきたい「親日だけど問題国家イラン」をめぐる国際政治のウラとオモテ

1/13(月) 17:30配信

文春オンライン

誤解だらけのイラン問題 ウクライナ旅客機を撃墜した「革命防衛隊」の正体 から続く

安全保障政策・対外戦略の決定権を持つアリ・ラリジャニ国会議長

 1月11日、海上自衛隊の哨戒機2機がアフリカ北東部にあるジブチ共和国に向かって出発しました。すでに同地を拠点にソマリア海賊監視任務に就いている2機との交代のためですが、今度の部隊からは活動エリアが北アラビア海やオマーン湾に拡大されます。いわゆる中東派遣の第1陣となるわけです。

 今後、2月2日には護衛艦1隻が同じく出航します。これらの部隊は中東海域で、日本関連船舶の安全確保のための情報収集活動を行うことになります。結局、米国側から求められていた有志連合には加わらず、ホルムズ海峡やペルシャ湾といった危険地域にも近づきませんが、見方によってはイランへの敵対的行為とも受け取れます。

 そこで日本政府は、イラン政府の機嫌を損ねる可能性を気にしています。日本は資源戦略の延長で、かねてから西側主要国では最もイランと良好な関係を維持してきました。つい先般も、2019年12月20日にロウハニ大統領が来日し、安倍首相と会見しています。日本側の最大の狙いは、今後中東に自衛隊を派遣することの理解を求めること。つまり「自衛隊を攻撃しないでください」とのお願いです。

 しかしイラン側で、たとえば2019年6月にホルムズ海峡で発生した、日本とノルウェーの海運会社が運航するタンカーへの攻撃のような工作を担うのは革命防衛隊です。「 誤解だらけのイラン問題 ウクライナ旅客機を撃墜した「革命防衛隊」の正体 」でも述べたように、ロウハニ大統領には革命防衛隊の活動に口を出す権限はありません。革命防衛隊を指導できるのは、唯一、最高司令官である現在80歳のハメネイ最高指導者だけです。なので、安倍首相がロウハニ大統領に会うだけでは、それほど効果は期待できません。

ロウハニ大統領は「使い走り」

 イランには最高指導者と大統領がいて、そこがまたイラン問題をわかりにくくしています。ロウハニ大統領は対外スポークスマン的な役目を負っていて、オモテの外交を担当しますが、イランという国の安全保障政策や対外戦略には決定権がありません。いわばハメネイ最高指導者の「使い走り」のようなものです。

 イランという国家の体制では、最高指導者が国家元首だと規定されています。大統領は国民の選挙で選ばれますが、イランでは大統領候補も国会議員候補も、「監督者評議会」の審査・認証が必要です。この監督者評議会は12人のメンバーから構成されますが、半分の6人を最高指導者が指名します。残り6人は国会で選出されますが、国会でも最高指導者の影響力は強く、結局は事実上、ハメネイ最高指導者が承認しなければ大統領になることはできません。

 つまり、ロウハニ大統領ならずとも、イランの大統領はハメネイ最高指導者の意思に逆らうことはできないわけです。ちなみに、最高指導者は「専門家会議」で選出され、罷免され得る規定ですが、同会議の議員はすべてイスラム法学者であり、立候補には監督者評議会の承認が必要なので、実際には最高指導者は事実上終身制となっています。

 ただし、これは今の話であって、たとえば1989年以降の8年間は、ホメイニ門下生でイスラム革命初期からの重鎮でもあるハシェミ・ラフサンジャニが大統領職にあり、ハメネイ最高指導者よりも、むしろイラン政界での存在感が大きかった時代でした。しかし、1997年にラフサンジャニが大統領職を退くと、ハメネイ最高指導者の存在感が相対的に大きくなり、それ以降の大統領に対してはハメネイ最高指導者が優位に立つ構図が続いています。

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最終更新:1/13(月) 17:30
文春オンライン

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