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橋本大輝選手:「美しい体操」でニッポンの次代エースへ―五輪アスリートの肖像(1)

1/14(火) 15:04配信

nippon.com

矢内 由美子

昨年10月にドイツ・シュツットガルトで行なわれた世界体操選手権で、2020年東京五輪での活躍が期待される新たなホープが誕生した。千葉県船橋市立船橋高校3年生の橋本大輝だ。

数あるオリンピック競技の中で日本勢が最も多くのメダルを獲得しているのが体操だ。その数は、金銀銅を合わせて98(金31、銀33、銅34)。金メダル数こそ39個を獲得している柔道にトップを譲るが、長い間にわたって「お家芸」と呼ばれてきたゆえんが、この数字に表れている。

ところが、昨秋の世界選手権の開幕前、日本チーム内には暗雲が垂れ込め、不安が充満していた。なぜなら、2016年リオデジャネイロ五輪で団体金メダルに輝いた内村航平や白井健三といった実力者たちが、ケガに苦しみ、代表から外れていたからだ。

さらにドイツ入りした後の現地での練習で、主力選手の谷川航が足首を負傷し、予定していた6種目(床運動、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒)のうち、着地の際に足首に負担のかかる跳馬や床運動など4種目に出ることが困難になった。これは痛恨のアクシデントだった。

度胸満点の演技で窮地の日本を救う

ここで、ピンチを救ったのが橋本だった。2013、14年の白井以来となる史上2人目の高校生代表となった18歳は、圧巻の世界デビューを飾る。

まずは5人でチームを組んで出た男子団体総合予選で、出場した4種目すべてにおいて日本勢トップの得点をマークした。特に素晴らしかったのは最初の種目の「あん馬」だ。台上にある把手を握って脚を旋回し続けるこの種目は、少しでもバランスを崩すと落下してしまうという難しさがあり、ベテラン選手でも相当な神経を使う。まして世界大会初出場の高校生にとってはとてつもない緊張感が漂ったはず。しかし、橋本は会場に詰めかけた1万人の視線を浴びながら、完璧な演技を見せた。

身長164センチ、体重54キロというスラリとした体型。手足の長さを存分に生かした演技は、審判から非常に高い評価を受け、国際大会で上位争いをする目安となる14点台後半を叩き出した。

「ワクワク感の方が強くて、緊張はほとんどありませんでした。とても楽しかったです」

このコメントが示す通り、度胸満点の演技だった。

当初から出場予定だった跳馬と鉄棒で大技を連発して高得点を出すと、谷川航の負傷によって任されることになった床運動でも日本勢トップの点を出した。こうして日本は予選3位で決勝に進んだ。

2日後に行われた決勝でも、橋本は日本の救世主になった。出場したのは予選と同じ4種目。だがこれは、初出場の選手としては異例の抜擢だった。

理由は団体戦特有の競技方法にある。世界選手権の団体戦は、5人中4人が演技をし、上位3人の得点の合計点で競う。このため1人のミスならば問題はない。ところが、決勝は演技をする3人全員の得点の合計で競うため、ミスが許されない。高校生にはかなりのプレッシャーになる。

ここで橋本は期待に見事に応えた。得意のあん馬で足先までスッと伸びた美しい演技を見せると、跳馬では「ロペス」(伸身カサマツ2回ひねり)と名のつく高難度技に挑んでピタリと着地し、鉄棒では夏場から入れ始めたばかりの「カッシーナ」(伸身コバチ1回ひねり)という難しい手放し技を完璧に成功させた。

団体決勝の結果は、金メダルのロシア、銀メダルの中国に続く銅メダルだったが、橋本の大活躍には2004年アテネ五輪の団体金メダリストである水鳥寿思男子強化本部長も大喜びだった。「期待はしていたが、期待以上だった。世界で高評価を得たのは大きな収穫です。東京五輪に向けて欠かせない選手になります」と興奮を抑えられなかった。

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最終更新:1/14(火) 15:04
nippon.com

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