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【書評】人生は短すぎる:崔岱遠著『中国くいしんぼう辞典』

1/14(火) 17:09配信

nippon.com

泉 宣道

中華料理は世界三大料理として知られる。「食」をことのほか大事にする中華圏では多彩な食べ物が長い歴史の中で育まれてきた。春夏秋冬、旬の乙な味もある。本書は中華料理の奥深さを堪能したい食いしん坊にとって必携の一冊である。

250種を超す中華料理を網羅

中国語版の原題は『吃貨辞典』(2014年刊)。吃貨(チーフオ)は日本語に訳せば「食いしん坊」のことだ。本書によると、「美食を愛し、生活の何たるかを知る者たちが自嘲し、あるいは互いを呼び合う流行語になった」

吃貨とは、贅沢な料理を追い求めるグルメではなく、美味しいものが好きだという人たちのちょっぴりユーモアを込めた呼称らしい。

本書は「家で食べる」、「街角で食べる」、「飯店(レストラン)で食べる」の3部構成。目次に掲載されている料理名は家が27種、街角が30種、飯店が26種の計83種に上る。しかし、本書巻末の索引「菜単(登場料理名一覧)」に出てくる料理名は優に250種を超す。

「一般に辞典というのは調べるために使うもので、順序どおりに頭から次々と読んでいく人は少ない。本書ももちろんそのように読むことができる。目次からあなたの興味の向いた料理のページを開き、お好みの一口を賞味して下さればよい」

この著者の言葉に甘えて、評者が食べたことのある料理のページをめくりながら、エッセンスを綴っていこう。

米副大統領も愛した北京の麺

著者は第1部の家の料理について「高価なものでこそないが、安心して、落ちついて食べられる。その濃厚芳醇な家庭の味わいは骨身に沁み、心を暖めてくれる」と定義する。豚の角煮「紅焼肉(ホンシャオロウ)」、ピータン「松花蛋(ソンホアダン)」、ちまき「粽子(ゾンヅ)」などである。

北京の代表的な家庭料理の一つが「炸醤麺(ジャージアンミエン)」だ。日本ではジャージャー麺などと呼ばれている。炒めた肉みそときゅうり、ニンジンなどの付け合わせを茹でた麺に乗せ、和えながら食べる。

炸醤麺の真髄は醤(ジアン)、みそである。「清朝の開祖ヌルハチはかつて『醤をもって菜(おかず)に代える』ことによって配下の部隊に栄養をつけさせ、のちには清朝宮廷の御膳にも四季に合わせた醤が欠かせないものになった」。清の時代から北京では醤を活用する食習慣が庶民に広がり、やがて名物の炸醤麺へと発展した。

米国と中国は現在、貿易戦争を繰り広げているが、オバマ大統領時代、バイデン副大統領(当時)は「北京を訪れた際にどうしてもと時間を作って食べに行った」という。炸醤麺は異国の首脳の胃袋もつかんだ。

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最終更新:1/14(火) 17:09
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