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日本人だけが知らない「ゴーン逃亡」本当の罪…欧米はどう報じたか

1/14(火) 8:01配信

現代ビジネス

国外逃亡は悪質、しかし…

 保釈の条件を破ってレバノンに国外逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が日本時間の1月8日夜、現地で記者会見を実施。一連の事件について、自分は無実であり、起訴された罪はいずれも「日本の検察と日産の経営陣が画策した陰謀に過ぎない」「日本の司法制度は非人道的で、公正な裁判を受けられない」という主張を繰り返した。

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 こうした言動に対して、日本では、法務・検察当局や日産自動車の関係者のほか、新聞・テレビも一斉に強い調子で批判を浴びせている。

 例えば、森雅子法務大臣はわざわざ翌日未明に記者会見を開き、「日本の刑事司法制度は適正な手続きを定めて運用されている」「国外逃亡は刑事裁判そのものから逃避したもので、どの国の制度の下でも許されない」と批判。

 東京地検の斎藤隆博・次席検事も「適法に捜査を進めて訴追に至ったものだ。そもそも犯罪が存在しなければ起訴に耐えうる証拠を収集できるはずがない。日産と検察に仕組まれたとの主張は不合理だ」とコメントした。ゴーン前会長に同情的な国際世論を意識したのだろう。地検は英語でも同じ趣旨のコメントを出す異例の対応をした。

 筆者も、ゴーン前会長の国外逃亡は悪質と考えている。刑事裁判の罪状はこれから裁判で争う余地があるものだが、国外逃亡はゴーン前会長が自らの意思で明らかに違法な出国手続きに基づいて行ったもので、将来にわたって国際逃亡犯の汚名が付いて回り、許されることはないだろう。

 とはいえ、まるで、ナショナリズムに取りつかれたかのように、当局や日産関係者だけでなく、新聞・テレビも一斉に逃亡犯には耳を傾けないという論調に振れたことには、違和感を覚えざるを得ない。もう少し冷静な議論をしないと、懸案である日本の司法制度改革の機を逸することになりかねない。

 そこでまず、ゴーン会見の概要のおさらいから、話をはじめよう。

「人質司法」の問題が浮き彫りに

 ゴーン前会長は開始予定より少し早めに、黒いジャケットにピンクのネクタイというビジネスマンらしい姿で会場に登場した。

 当初は、冒頭の30分間をオープニング・ステートメントとして、自身の主張をする予定だったというが、実際は2倍超の67分間にわたって自説を展開。その結果、会見は全体で2時間35分を超える長時間に及び、まるで独演会だという批判も少なくなかった。

 オープニング・ステートメントはざっくり分けると4部構成で、最初が130日間に及んだ拘置所生活の説明だった。窓もない狭い独房で、食事もその中でとらされ、シャワーは週2回しか許されず、薬も飲ませてもらえなかったといった話が語られたのだ。

 次いで、ゴーン前会長は日本の刑事司法制度、特に一般に「人質司法」と呼ばれる長期勾留の問題点などに関する批判を深掘りした。そして、公正な裁判を受けられるのかと自身の弁護士に尋ねたところ、「そうなるよう努力する」という心許ない答えしかなく、これでは日本で死ぬか、日本から逃げるしか選択肢はないと感じたので、選択肢としては国外逃亡しかなく、これが正当な行為だったと言い張ったのだ。

 この会見を、筆者が自身のラジオ番組で取りあげたところ、あるリスナーから「選択肢がなかった、という話は会見を聞いていてとても実感できました」とのコメントをいただいた。国外逃亡を容認するわけではないが、そこに至る人質司法の問題点を憂慮しているというのである。

 会見に話を戻すと、具体的な逃亡方法については、手助けした人たちが追及されるからだろう。この点には頑なに口をつぐんだ。

 そのうえで、32分過ぎから、ゴーン前会長が言及したのが、この事件は自分を権力の座から引きずりおろすためのクーデターだったという、ゴーンサイドから見た事件の構図だ。

 この陰謀に関与した日産関係者として、以下の順で6人の名前をあげた。あわせて肩書も記すと、前日産自動車CEO兼社長の西川広人取締役、ハリ・ナダ日産自動車専務執行役員、元日産自動車理事の大沼敏明三菱自動車秘書室長、豊田正和日産自動車社外取締役、川口均前日産自動車副社長、今津英敏元日産自動車監査役――である。

 これらの人々が検察官や政治家と協力してゴーン前会長を追い落としたと語ったのである。しかし、事前の米国メディアの取材では明らかにすると表明していた、日本政府関係者の名前は「レバノン政府に迷惑がかかる」といい、明らかにしなかったのは肩透かしだった。

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最終更新:1/14(火) 11:10
現代ビジネス

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