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桃田選手の交通事故、地元で“陰謀説”まで飛び交う理由─問われる海外遠征での安全管理

1/15(水) 8:39配信

クーリエ・ジャポン

マレーシアの首都クアラルンプール郊外で、バドミントンの国際大会を終えて空港に向かっていた桃田賢斗選手が乗った車がトラックに追突。車の運転手は死亡し、桃田選手を含む4人がけがをした。

なぜ、命に関わる大きな事故は起きたのか? この件を通じて問われることとは? クアラルンプール在住のジャーナリストの末永恵氏が現地を取材した。

地元メディアでも大きく報道された「世界的なアイコン」の事故

「一歩間違えば、桃田選手は亡くなっていた可能性もある」──。

日本の期待を背負い、東京オリンピックで全競技を通じて最も金メダルに近いバトミントン界の世界最強の男が、異国の地で不慮の交通事故で負傷するという、痛ましい「Deadly smash(命取りの破壊的事故)」(地元メディア)に見舞われた。

今回の“桃田事故”は、バトミントンが国民的スポーツで、アジアでも有数の強国で知られるマレーシアや14日から国際試合が開催されているインドネシア、さらには伝統的なバトミントン王国の中国などアジア各地のメディアで連日、大きく報道されている。
背景には、東京オリンピックを目前に控え、各国がメダル争いにしのぎを削るなか、世界ランキング1位の桃田は、バトミントン界の「世界的なアイコン(憧れの存在)」(サイド・サディク氏)。追われる立場であるゆえ、ダントツに人気があることがもちろん、大きい。

しかし一方、金メダル最有力候補のトップ桃田の“脱落”は、ライバルである彼らのメダル獲得の可能性を高めることにつながり、日本と違い莫大な報奨金がぶら下げられている中国やインドネシアなどが今回の事故状況や桃田の安否を注視している大きな背景ともいえる。

五輪という舞台は、選手一人ひとりが、国家の旗を背負う国家の威信も賭けた極めてシビアな競争の大祭典であるということを忘れてはならない。

“中国陰謀説”まで語られる始末

筆者は、桃田選手が入院、治療を受けている国立プトラジャヤ病院の最上階のVIPフロアで関係者への独自取材を行い、桃田選手が「早期帰国を希望しており、精密検査で確認次第、15日にも日本に帰国するだろう」という朗報を得て、安堵している。

一方、世界ランキング1位の選手が“生死をさまよう”危険性を帯びた事故に見舞われることになった肝心な原因だが、マレーシア警察当局は「調査中」とし、事故発生から2日が経とうとしているが、早期の原因究明の兆しは見られないのが現状だ。

マレーシアでは、クアラルンプール国際空港で有毒な神経ガスにより、北朝鮮の金正男が暗殺された際、空港を閉鎖せず、通常どおり運営を続行したことで国際社会から非難を浴びた経験がある。さらに、事故後2週間を経てから、「空港の安全宣言」を行うなど、公共、交通機関での危機管理面の後手が指摘されてきた。
今回の事故では現時点で、再発防止を含め、事故の原因や当時の状況の詳細が明らかにされていない。

そのため、地元では「中国による陰謀では?」などと、東南アジアで多発・急増する中国企業や中国人による犯罪を背景に、東京オリンピックでの中国の国家威信をかけた仕業ではないかと、まことしやかに“中国陰謀説”が語られる始末だ。

当然、桃田選手や事故の負傷者の早期回復と精神的なケア、さらに事故で命を落としたマレーシア人や遺族に哀悼の意を表すのは重要だが、「あの場所で、あの時間に、あのような状況でなぜ事故が起きたのか」という原因は追及すべきだ。専門家の間でも、今回の事故は「レアなケース」と分析されているのだ。

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最終更新:1/17(金) 7:54
クーリエ・ジャポン

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