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「暴力的なゲーム」は社会の重要課題ではない。むしろ問題は「オンラインへの隔離」にある

1/15(水) 8:11配信

WIRED.jp

まるで事件そのものが半自動式になったかのように、米国では2019年に銃乱射事件が続けざまに起きた。そして19年8月はじめにテキサス州エルパソとオハイオ州デイトンで起きた事件をきっかけに、包括的な銃規制が是が非でも必要だという議論が再び巻き起こっている。

「ゲーム障害」は本当に疾病なのか?

トランプ大統領や共和党支持者たちはこれまで同様、銃規制の話を何とかはぐらかして状況を切り抜けようと考えた。事件の原因はこれだとばかりにやり玉に挙げられたのは、お決まりのヴィデオゲームだった。

ゲームは暴力を助長しない

トランプは2件の銃乱射事件後にホワイトハウスでスピーチを行い、深い悲しみに暮れる全米の人々に向かって、「われわれは暴力の美化を止めねばならない」と主張した。「世間に広まっている残酷なヴィデオゲームもそのひとつだ。問題を抱えた若者たちは、いとも簡単に暴力を称える文化に囲まれてしまう。そうした事態をいますぐに阻止するか、大幅に改善すべきだ。文化を変えるのは難しい。だが、わたしたち一人ひとりが、すべての人命がもつ本質的な価値と尊厳を称える文化をつくりあげるための選択をすることはできる」

何とも皮肉に満ちたスピーチである。というのも、トランプはエルパソの銃乱射事件について哀悼の意を示した直後、デイトンの事件について弔意を述べる前に、総合格闘家コルビー・コヴィントンと並んで写真に収まり、翌日の試合で対戦相手を打ちのめせるよう健闘を祈るツイートをしていたのだ。

また、トランプが19年5月にフロリダ州で開いた集会で、「(不法移民を阻止するには)撃てばいい」という支持者の声を聞いてにやりと笑みを浮かべたことも忘れてはならない。「そういうことを言って許されるのはパンハンドルだけだ」と、トランプは言ったのだ。

真の意味で文化を変えるには、そうしたコメントを拒絶することから始めなくてはならない。いまの状態では、ゲーム反対派としてのトランプには説得力がないのだ。

とはいえ、ひとまずは立ち止まって、「凶悪な行動をとる」残酷なゲームについて考えてみよう。例えば、メディア史上最高である60億ドル(6,430億円)もの売上を約6年で達成した「グランド・セフト・オート V」では、プレイヤーはストーカー行為や銃撃に加え、たびたび女性に対して暴力をふるい、拷問をする。

そんなゲームは悪影響を与えると考えるのも無理はない。こうしたゲームが現実世界での暴力行為につながる恐れがあるのは、直感的に明らかなように思える。だが研究者たちによれば、こうしたゲームは本物の暴力にはつながらない。架空の世界における報酬体系と現実世界における報酬体系が、強力な膜によって切り離されているかのようだというのだ。

これについて、カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)の精神医学教授ティモシー・フォングに話を聞いた。フォングは、ギャンブルおよびヴィデオゲームを専門とする研究者で、UCLAの依存症専門クリニックであるAddiction Medicine Clinicを率いている。

ゲームに興じることで、人のメンタルヘルスに影響はあるか尋ねたところ、フォングは「もちろんあります」と答えた。とはいえ、そのなかにプレイヤーの暴力の助長は含まれていないという。「(暴力の助長は)反証されています」と彼は言う。

ゲームに異常なまでに没頭すれば、深刻な問題が生じることはあるとフォングは言う。例えば、極端にのめり込んでしまった場合には、うつ病や孤立感などが伴う場合があるのだ。ただし、架空の世界と現実の世界それぞれで起こる暴力および堕落の間には、1対1の対応は存在しない。

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最終更新:1/15(水) 8:11
WIRED.jp

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