ここから本文です

仕事が絶えないあの人の、“こうしてきたから、こうなった”サッカー元日本代表”鈴木啓太「オーブ」代表編

1/15(水) 10:57配信

WWD JAPAN.com

 転職はもちろん、本業を持ちながら第二のキャリアを築くパラレルキャリアや副業も一般化し始め、働き方も多様化しています。だからこそ働き方に関する悩みや課題は、就職を控える学生のみならず、社会人も人それぞれに持っているはず。

仕事が絶えないあの人の、“こうしてきたから、こうなった”サッカー元日本代表”鈴木啓太「オーブ」代表編

 そこでこの連載では、他業界から転身して活躍するファッション&ビューティ業界人にインタビュー。今に至るまでの道のりやエピソードの中に、これからの働き方へのヒントがある(?)かもしれません。

 連載第6回目に登場するのは、腸内フローラ(腸内細菌の生態系)解析事業を行うベンチャー企業「オーブ(AUB)」の鈴木啓太代表です。2000年に浦和レッズに入団し、サッカー日本代表としても活躍してきた鈴木氏は、引退直前の15年10月に「オーブ」を創業。これまでに、500人を超えるトップアスリートから便を集めてきました。その分析データからアスリート独自の特徴を発見し、製薬会社や食品メーカーとの共同研究や自社製品開発を行っています。オリンピック・パラリンピックを控えて関心が高まるスポーツ選手のセカンドキャリア。実業家として新たな道を歩む鈴木氏に、その転身と挑戦を聞きました。

WWD:選手時代から引退後のキャリアについて構想していたのでしょうか。

鈴木啓太(以下、鈴木):スポーツ選手というのは必ず引退がある職業で、サッカー選手はそれが比較的若い年齢でやってきます。ですから職業が変わるということはプロになってからずっと覚悟はしていましたね。とはいえ、具体的にビジネスを学ぶとかそういうことではなくて。経営者などのビジネスマンをはじめ、スポーツとは離れた仕事をしている方々や友人との時間を意識的に持つようにしていました。幼い頃からサッカー三昧でしたから、「こういう仕事もある」「こんな考え方もある」という、新鮮な気づきや学びを得ることができたと思います。

WWD:腸内細菌をビジネスに、というのは現役中の経験からきたものなのでしょうか?

鈴木:そうですね。アスリートは皆、大なり小なり体調管理に気を配っているかと思うのですが、アプローチの一つとして僕は“お腹”、すなわち腸内環境を整えることだったんです。調理師であった母親の影響が大きいですが、食事は温かい緑茶で終えること、海外遠征にも緑茶と梅干しを持っていく、お灸や腹巻をするなど、自分なりの調整法を編み出していました。

腸の大切さを痛感したのは、04年アテネ五輪アジア最終予選でのこと。代表選手23人中18人が下痢症状で、3~4キロも体重が落ちているような状態でした。僕はというと、体調に問題なく試合ができた。これはお腹のコンディションを整えていたおかげなのかなと、「人間は腸が一番大事よ」と口をすっぱくして言っていた母親に感謝しましたね。

15年6月、知人を介して“便を研究している”という人に会い、話を聞いているうちに自分のこれまでの経験と科学的な知見がリンクしました。「アスリートの人の腸内細菌を調べたら面白いだろう」という僕からの提案で腸内フローラ研究に足を踏み入れることになりました。アスリートは一般の人よりも日頃からコンディションを整えているし、有益なデータベースになり得る特徴的な対象だと感じたんです。腸の環境を“見える化”すれば、きっとアスリートの体調とパフォーマンス向上に役に立つと、強く感じたわけです。

WWD:会社を設立された頃について教えていただけますか?

鈴木:経験もなければ知識も足りないわけで、特にファイナンスの部分は今も難しさを感じています。設立メンバーは、大学教授、ヘルスケアベンチャーの立ち上げをやられている方、スポーツトレーナーなどです。当時、すでに腸内細菌の研究によってその数や種類や身体への関与が解明され始めてはいたものの、ビジネスチャンスは見えにくかった。そんな中、設立メンバーの中の方向性の不一致で人の入れ替わりもありましたし、共同研究先を替えることもありました。結果的に、設立時の出資者から株式を買い取らなくてはならないことになり、ビジネスの厳しさを思い知らされましたね。

WWD:「スポーツ選手がビジネスなんて」といった後ろ向きの声もあったと聞きます。

鈴木:ありましたね。でも、そういう“外野”の声は関係ないんです。冷静に考えても、今後ヘルスケアベンチャーの分野は伸びるだろうし、こうした研究は必ず誰かがやると感じていました。でもこれ、僕がサッカー選手になるときと同じなんです。プロになる前もなった後も、周りを見れば僕より上手な人はたくさんいたし、プロになっても試合に出られるかなんて分からない。いくらベストを尽くしたとしても、負ければ批判を受けることもある。不安はいやでも付きまとうんです。人って、自分の経験で物事を考えて「これができそう」「これはできない」って考えがちなんですよね。あくまでその人の中の尺度であって、僕は僕ですから。もちろん、人の意見を聞く耳は持たなければならないけれど、決定するのは自分です。人生一度きりですし、やりたいことをやりたいですよね。これはサッカー選手を経験したからこそ強く感じている部分かもしれません。

腸内細菌研究の中でも、僕らはアスリートに特化しているという点で大きな強みだと確信しました。立ち上げ当時は世間的にもすでに腸内細菌への関心が高まっていましたから、“サプリメントを売りましょう”と簡単に言うこともできたかもしれません。けれど、研究を進めるためにはまず、もととなるデータがないと進まない。最初はとにかくアスリートの便の研究に集中しようと決めました。

1/3ページ

最終更新:1/15(水) 10:57
WWD JAPAN.com

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事