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睡眠中には脳内から“毒素”が洗い流される:米研究チームがメカニズムを解明、アルツハイマー病の治療に光

1/15(水) 12:11配信

WIRED.jp

ローラ・ルイス率いる研究チームは、ボストン大学のラボでいつも夜ふかしをしている。午前3時まで実験して、翌日の遅くまで寝るのがルイスの“通常運転”だ。「タイムゾーンを移動しないまま時差ボケしているような感じです」と、彼女は言う。

「脳の老廃物」を除去するには、深い睡眠が必須だった

夜しっかり寝ることの大切さを理解していないわけではない。しかし、眠っているヒトの脳内で何が起きているのかを解き明かすためには、多少の犠牲はやむを得ない。「睡眠研究の大いなる皮肉です」と、彼女は言う。「研究者は、ほかの誰かの睡眠に合わせるしかないのです」

『サイエンス』誌に2019年10月31日付で掲載されたルイスらの研究論文は、わたしたちの脳が睡眠中に毒素を取り除くメカニズムを明らかにしている。この研究は、アルツハイマー病などの神経変性疾患の治療と予防に新たな道を開く可能性もある。

なぜ睡眠中に毒素は除去されるのか?

ヒトが眠っているとき、脳はいくつかの状態を経験する。浅い眠り、無意識に陥るような深い眠り、そして夢を見やすいレム(急速眼球運動)睡眠。ルイスの研究はノンレム睡眠に注目している。概して夜の早い時間に起きる深い眠りで、記憶保持との関連が知られている。

これに関連して、マウスを対象とした重要な研究が13年に発表されている。マウスが眠っている間に、アルツハイマー病の原因のひとつであるβアミロイドなどの毒素が、脳内から除去されることがわかったのだ。

ルイスは、毒素がどのように除去されるのか、このプロセスがなぜ睡眠時にだけ起きるのかに興味をもった。脳の周囲を循環する水のような液体である脳脊髄液がかかわっているのではないかと、彼女は考えた。しかし、睡眠中の何が特別なのかは見当もつかなかった。そこでルイスは、さまざまな変数を同時に測定する実験を考案した。

実験参加者は、MRI装置のなかで横になって眠るよう指示された。通常の睡眠サイクルを再現するため、実験は深夜0時からスタートした。研究チームは、参加者たちが実験開始後すぐに眠れるように、前夜は夜ふかししておくよう依頼した。

ルイスは参加者に脳波測定キャップをかぶせ、脳の電気活動を可視化した。脳波を見ることで、参加者が睡眠のどの段階にいるのか判別できる。一方、MRIは脳内の血中酸素濃度を測定し、脳脊髄液がどれだけ循環しているかを明らかにする。

「これらの測定指標が重要なはずだと直感していました。それでも睡眠中にどう変化するか、どのような相互の関連があるのかは、わたしたちにも未知の領域でした」と、ルイスは言う。

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最終更新:1/15(水) 12:11
WIRED.jp

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