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日本の少子化の根本要因は「少母化」──既婚女性の子どもの数は実は減っていない

1/15(水) 17:14配信

ニューズウィーク日本版

<世帯あたりの子どもの数では、この30年でそれ程大きな変化は見られない>

2019年の日本の出生数は予測を大きく下回る86万4000人だった。2018年は91万8000人だったから、前年より6万人減ったことになる。

【グラフ】過去30年の既婚女性の子どもの数推移

少子化に加えて高齢化で亡くなる人も増えるので、人口の減少は加速度的に進む。2020年代以降毎年50万人、2040年代以降は毎年100万人規模で人口が減っていく。20年代以降は1日あたり1370人、40年代以降は毎日2740人がいなくなる計算だ......「静かなる有事」と言っていい。

少子化の要因は、(1)結婚する女性が減っていること(未婚化)と、(2)既婚女性が産む子どもが減っていること(少産化)、という2つのフェーズに分けられる。どちらも進んでいると思われているが、実は(2)についてはそうではない。

『国勢調査』に、既婚女性が同居している児童数(20歳未満)の分布が分かる統計表がある。25~44歳の既婚女性を取り出し、同居している児童数(子ども数)の分布を、1985年と2015年で比べると<表1>のようになる。

<表1>

どちらの年も、子どもが2人という母親が最も多くなっている。1985年では全体の40.4%、2015年では37.4%を占める。右欄の構成比をみると、30年間で大きな変化はない。既婚女性の子ども数(結婚した女性が産む子ども数)はほとんど変わっていないようだ。

変わったのは母親の絶対数だ。左欄の人数の合計を見ると、1985年では1595万人だったのが2015年では1001万人と、およそ3分の2に減っている。昔にくらべて出産年齢の若い女性が減り、未婚率も上昇しているのだから当然だ。ソロ社会研究者の荒川和久氏は、少子化ではなく「少母化」が問題だと指摘している。

上記の分布から既婚女性の子ども数の中央値(median)を出すと、1985年が2.08人、2015年が2.03人でほとんど変わっていない。都道府県別に見ると<表2>、増えている県すらある。以下の19県だ。

<表2>

既婚女性の出産数は減っていない。少子化の真の要因は、人口減少・未婚化による「少母化」ということになるが、これはいかんともし難い事態だ。人数が多い団塊ジュニアの女性ももうすぐ50代になり出産年齢を外れる。若い女性の絶対数もどんどん減るので、どうやっても日本の出生数を増やすのは不可能だ。

少子化の進行を少しでも食い止める方法は、「少母化」のもう一つの要因である未婚化を抑えること。これは広く認識されており、各地で婚活支援の取り組みが盛んに実施されているが、なかなか効果を上げられないでいる。

実のところ、若者の間では結婚は「オワコン」という見方も広まっている。出産願望は強く、20代女性の3割が「結婚はしなくていいが子どもは欲しい」と考えている(内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』2018年)。

こうした考えを持つ女性が出産に踏み切れたら、状況はだいぶ改善されるだろう。未婚、事実婚、同性婚......どういうライフスタイルを選んでも、子どもを産み育てられる社会の実現が望まれる。しかし現実の日本はその実現度合いが低く、2016年の婚外子比率は2.3%しかない(フランスは59.7%、スウェーデンは54.9%)。各国の婚外子比率は、合計特殊出生率とプラスの相関関係にある(拙稿「婚外子が増えれば日本の少子化問題は解決する?」本サイト、2017年7月13日)。

今回のデータから、結婚をしている夫婦に限ると出産数は減っていないことがうかがわれる。法律婚をしているのは25~44歳女性の6割だが、残りの4割の人たちも出産・子育てを考えられる社会にすることが問題解決のカギになるだろう。寡婦控除のみなし適用等、未婚の母への支援が以前より進んでいるのは、それに向けた取り組みとして評価できる。

<資料:総務省『国勢調査』>

舞田敏彦(教育社会学者)

最終更新:1/15(水) 19:15
ニューズウィーク日本版

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