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King Gnu、怒涛の2019年と『CEREMONY』の裏側を明かす

1/15(水) 18:00配信

Rolling Stone Japan

2010年代の音楽を語る上で、2010年代最後に頭角を現した、音楽家・常田大希率いるKing Gnuの存在を抜きにするわけにはいかないだろう。

写真3点:King Gnu、怒涛の2019年と『CEREMONY』の裏側を明かす

星野源もceroもSuchmosもやってきた、ブラックミュージックをいかに日本語ポップスに昇華させて面白い音楽を作るかという試みにおいて、King Gnuはクラシックや現代音楽の要素などをも高次元で混ぜ合わせて文化をさらに前進させ、しかも「日本の大衆歌を作る」と高らかに宣言しながら、それをメジャーデビューからたった1年未満で見事に実現してしまったのだから、拍手を送らずにはいられない。

ただ、彼らの音楽が宣言通り大衆歌となった2019年、King Gnuは疲労困憊状態に陥っていたことを、このインタビューで知ることとなる。音楽シーンに限らず世の中全体を見渡しても、2010年代は「効率化」が進められた時代であったと言えるだろう。しかし、効率ばかりを求めていると、やはりこぼれ落ちてしまうものがある。そしてそれらが、実はとても大切だったりする。King Gnuはそのことに気づき、そして私たちにも教えてくれた。人と人のあいだに生まれる信頼、愛、熱量を大切にしてきた4人のミュージシャンたちは、2020年以降、どこへ行くのだろう。

※この記事は2019年12月25日発売の『Rolling Stone JAPAN vol.09』に掲載されたものです。

大きくなる中で苦しさが溜まった2019年

ー2010年代最後の「NHK紅白歌合戦」への出場も決まりました。「紅白」というのは大衆歌として認められた証でもあって、ずっと「大衆歌を作る」という目的を掲げてきたKing Gnuにとってはひとつ大きな手応えでもあるのかなと思ったのですが、いかがですか?

新井和輝(Ba) まあ、僕らが実感している以上の事態になっているんだなとは感じていますね、本当に。

常田大希(Vo, Gt) びっくりはしたよね、実際に話が来て。

新井 うん。2019年メジャーデビューして、1年で本当に行くところまで行ったなあって感じはします。

常田 声がかかったら出ようとは、夏くらいから思っていたので、話が来た以上、出ないという選択肢はなかったですけど。

ーそこで演奏する「白日」への心情や愛着って、なにか変化はありますか? 本誌のvol.07で常田さんをインタビューさせてもらったとき、それまでKing GnuがJ-POPとしてやってきたことの中から食いつきがよかったものを詰め込んでヒットを狙って作った、ということを話してくれましたけど、1年通していろんな場で演奏し続けてきたことで、曲に対する気持ちの変化とか気づきはあったのかなと。

常田 うん、年末にかけてテレビとかでやることも多くなってきたし。……どうすか?

井口理(Vo, Key) (常田)大希は狙って作ったって言ったにせよ……アルバムの曲順を決めるときにみんなで聴き直したんですけど、やっぱりめちゃめちゃいい曲だなっていう、結局。

勢喜遊(Dr, Sampler) うん!

新井 ツアーでもずっとやってたので客観的に聴く時間があんまりなかったんですけど、改めて聴いて、「え、めちゃめちゃいい曲じゃん!」って。

ー間違いないです。あの曲は単純に歌モノのポップスとしても素晴らしいし、だからこそ日本人に対してあれだけ広まったし、でもそれだけじゃなくて、たとえばリズム隊2人はめちゃくちゃ歪なことをやってるっていう、それこそ1年聴き続けても飽きないくらい面白さが何層にもなってる曲で。

勢喜 うん。その辺のバランス含め、ですね。総合的に。「全方位型いい曲」です。

常田 ……ん?

新井 はははは(笑)。

常田 当時、それこそ「当ててやろう」という想いもあったし、Aメロ、Bメロ、サビの全部のセクションをサビになり得るくらいの強度でグッと来させるようにしたい、という意思が今より強くて。だから展開も多いし。……今「白日」を改めて聴くと、やっぱり1曲をあそこまでちゃんと作らなきゃなっていう風な身が引き締まる感覚にはなるんですよね。最近、スケジュール的にも精神的にもしんどくて、曲を作るときに1曲に対する想いが分散しがちだったので。

ーああ。この1年でどれだけ相手ありきの曲を書き下ろしたんだ、どれだけ締切と闘ってたんだ、っていうのは、ニューアルバム『CEREMONY』を聴いても明らかで。「Overflow」は家入レオさんへの提供曲で、あとはインストと「壇上」以外全部タイアップ曲っていう。

常田 そうですね。

ーそして唯一タイアップじゃない「壇上」は、常田さんがひとりでヴォーカルを取っていて、かなりパーソナルなことを吐き出していますね。“もう十分でしょう もう終わりにしよう”とまで。

常田 パーソナルっすね、はい。まあ、アルバム制作中は鬱状態みたいになってて。King Gnu、「紅白」も出るし、もうここらで解散しとこうかな、みたいな。そういうのもチラつくくらい精神的にキテたんですよね。

勢喜 (失笑)。そうだったんだ。

常田 まあ、メンバーの顔を見たら持ち直しましたけど。

ーそれは……どういう落ち方だったんですか?

常田 やっぱり、その……一つひとつの作品への愛情が薄まれば薄まるほど、プロジェクト自体に興味がなくなっていくというか。本来だったら俺はこんなの絶対にNGを出す、というものが世に出ていったりして、俺の中で「もうなんでもいいよ」って気持ちになっちゃう状況があったり。一個一個に対して、クリエイティブを全体的に考える余裕がなくなっていったし、取り巻く人たちがどんどん増えていろんな人が絡んでくる中で、ちょっとぼやけてきたものが間違いなくあって。

ーKing Gnuの存在があまりにも一気にデカくなりすぎて、関わる人も多くなるし、自分の思うクオリティをキープできない範疇にまで広がってしまったというか。

常田 音楽は誠意を持ってちゃんと作ったし、手を抜いたという話ではまったくないんですけど。クリエイティブの「歪み」みたいなものは気づかない内にあったなって、俺個人は感じていましたね。一回見つめ直すときがきてるのかな。

勢喜 そうですね。マジで、見つめ直したいですね。

ーこの特集の次のページにあるceroとSuchmosの対談で、売れるという波が自分たちのところへ来たときにどう乗りこなすのか、という話をしてくれていてるんですね。もちろんその波の頂上に乗り続けようとする人もいるけど、それって音楽家としてすり減らすこともめちゃくちゃあるから、両者は「乗り続けるのは危ない」という意識になった、と。今のKing Gnuも大きい波に乗ってるところで……。

常田 同じ……。ただSuchmosとかceroと違うのは、「ポップスをやろう」という意思が圧倒的に俺たちにはあるから、アンダーグラウンドな存在になりたいわけではないし、波から降りようとはならないと思うんだけど。

勢喜 うん。

常田 ただ、もうちょい、ポップスを作るにせよ、一発一発をもっと……。

勢喜 上質な、ね。

常田 そう、上質に魂を込めたものをやっていくペースにもう一回戻すっていう意味ですかね。あと、仕事に挑む姿勢っていうのかな。

勢喜 一個一個のやり甲斐とかね。

常田 そうそう。一つひとつ、もっと思い入れができるような形をね。選ぶ目は厳しくやっていった方がいいかなって。だから、「メジャーってなんか違うな」と思っているわけではなくて、そこをちゃんとしっくり来る形に落としたいなっていう。

ーメジャーでのやり方をもうちょっと考えよう、みたいな。

常田 うん。そういう気持ちが強いですね。

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最終更新:1/15(水) 18:00
Rolling Stone Japan

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