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なぜ人は楽器ケースの中に入ってはいけないのか?

1/15(水) 6:01配信

JBpress

 カルロス・ゴーン氏の国外脱出劇で「楽器ケース」の中に潜んでの大脱走が話題となりました。それを真似して楽器のケースに入ってみるという遊びがあちこちで発生しているようです。

 これに対して、楽器メーカーのヤマハ関係者が、「あえて理由は記さないけれど悲劇が起きてからでは遅いので」として牽制するSNSを発信し、大きな反響が出ているようです。

 さて、ここで改めて考えてみましょう。楽器のケースとはいかなるものか?  

 私たち音楽家にとって、楽器は自分自身を表現するための唯一最大のチャネルで、命と同様に大切なものです。

 プロを目指す場合、ヴァイオリン一つ、その弓1本が、普通に家1軒くらいの値段になる場合があります。

 チェリストが飛行機で移動する際は、隣の座席をチェロ君のためにリザーブし、2人連れで旅行することになります。当然、料金も2倍かかる。

 社会全般が日頃あまり考えることがないだろう「楽器」の、さらに周辺にある「ケース」の本質的な役割から、考えてみたいと思います。

■ 楽器の大敵、湿気と乾燥

 早い時期のゴーン報道で、すでに楽器ケースには空気穴が準備されており、それがなければ窒息、といったことが記されていました。

 コントラバスとかチェロ、あるいはヴァイオリン、ヴィオラなどに限らず、ハープでも、いや、そもそもピアノという楽器が「木造」であることに注意しましょう。

 木製の器具を長く使ううえで、一番重要な要素として「湿度管理」を挙げることができます。

 湿気が少なすぎても、乾燥して木の板は割れてしまいます。また湿気が多すぎると、楽器本来の鳴りが失われてしまう場合があります。

 「音楽は世界の言葉」なんていうけれど、それはかなり浅い嘘であって、少なくともアコースティックの楽器については、その土地土地の気候風土が楽器にとっての最良のコンディションを決定しています。

 かつて武満徹さんという作曲家が、尺八と琵琶、管弦楽のための「ノヴェンバー・ステップス」(1967)という作品をニューヨーク・フィルハーモニックの委嘱で作曲したとき、その初演のため米国に赴いた筑前琵琶の鶴田錦史さんは、楽器の乾燥という災難に見舞われます。

 琵琶という楽器は、微妙な倍音が沢山響いて、初めてその音色、そして音楽が成立しますが、楽器が乾燥してしまうと全体のコンディションが崩れてしまう。

 しかし、ニューヨークを含め、米大陸の気候風土は、カラッと乾燥しており、およそ日本の高湿度とは似ても似つきません。

 そこで鶴田さんはどうしたか・・・。いろいろ試行錯誤をしたけれど 最初はうまくいかなかったそうです。

 最終的には、琵琶を「白菜」などの「野菜」で包むことで問題を解決しました。

 野菜もまた 生きています。湿気も含め、野菜は呼吸している。それを、木材というやはり「呼吸するもの」のキープに用いることで、琵琶のコンディションを復活させたという、なかなか示唆深い話だと思いました。

 楽器ケースというのは、外部の湿度が影響してインストゥルメントが失調しないよう、基本的に「気密」に作られている場合が少なくありません。

 これは、やはり木材で作られている「木管楽器」も同様ですし、金管楽器など金属性の楽器も「錆び」ますから、気密は十分に配慮されるべき性質です。

 フルートのように、今日では金属でできている「木管楽器」もありますが、いずれも湿度管理は重要です。

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最終更新:1/15(水) 6:01
JBpress

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