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壇蜜「結婚して3ヵ月で夫を失くした人妻」の心境を語る

1/15(水) 11:01配信

現代ビジネス

「夫を喪っても、悲しめない人」

 ―'19年11月に、漫画家・清野とおるさんと結婚されたばかりの壇蜜さん。『はんぶんのユウジと』はその前に刊行された連作小説集ですが、奇しくも「結婚」がテーマの一つです。

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 26歳のイオリは、両親に急かされた見合いで出会ったユウジと結婚したものの、3ヵ月目にして夫は病死してしまう。表題作では、イオリの心の機微がまるで壇蜜さん自身が話されているかのように、淡々と描かれます。

 小説を書こうとしたときに、「この世の中には、どんな人がいるんだろう」とまず考えたんです。そんな時にたまたま読んだのが、西岸良平さんの『三丁目の夕日』でした。

 結婚してすぐに夫を戦争にとられてしまった女性が、「たった数週間だけど、私は幸せでした」と喪った夫を述懐するエピソードを読んで、平成、令和になった現代でも、同じような人っているのかな……と思ったんです。そんな思いつきから生まれたのが、イオリでした。

 イオリについて考えているうちに、「夫を喪っても、悲しめない人」がいるとしたら、どんな人だろうって頭に浮かんだんですね。そこから、彼女の背景を作っていきました。

 大恋愛の末の結婚でもないし、3ヵ月一緒に過ごしたと言っても、どこまで心が通じ合ったのか。悲しいのか分からない、悲しいはずだけど、どう振る舞ったらいいか分からない。でも、大事な人を目の前で亡くして悲しくないはずはないんだ……そんな思いを描くようにしました。

誰もが回想しながら生きている

 ―イオリは実家暮らしで仕事も長続きせず、何をするにも自分から動き出さない性格で、親の言うままに生きてきた、受け身で自活できない女性です。自身を投影した部分はありますか? 
 私はグラビアのお仕事をする前、30歳まで親元にいましたから。家にお金を入れられない時期もありましたし、一人前でない人間を、過去に生きているんですよね。

 私は、人は誰も回想しながら生きていると思っていて、私も未来のこと、自分より歳を重ねた人物は書けないなと思うし、自分の経験から広げて書くしかありませんでした。

 ―連作を通して、人と人との関係性、距離が丁寧に描かれますが、タイトルにもある「はんぶん」がキーワードになっています。

 食事したレストランで、ユウジとイオリはビーフシチューとハンバーグを半分に分けあうけれど、冷めてしまって美味しくないとイオリは思う。象徴的なエピソードだと思いました。

 イオリもユウジも一人で生きるには「半人前」。じゃあ、半分と半分があわさったら一人前で、立派になるかと言うと、そんな素敵な話じゃない。

 ピザのハーフ・アンド・ハーフにしても、結果、満足度は下がったり、リバーシブルの服を買っても、どちらか一面しか着なかったり。

 半分こって、お得だったり分かち合いだったりいいイメージもありますけど、結局は弱いほうばかりが目立ってしまったり、案外「しょうもない」ことなんじゃないかと思うんです。結婚にしても同じかなって。

 ―ユウジの遺骨を、イオリが家の流し台でぞんざいに扱う場面は、生々しいなかに可笑しみもありました。過去に葬儀の仕事をされていた壇蜜さんならではの表現ですね。

 はじめて葬儀の見学で骨壺を見たとき、細かなお骨がなみなみと入っていて驚きました。地域によって風習は違うのでしょうけれど。小説を書く時に、自分の経験や、好きな作品を継ぎ接ぎにしているんですよね。

 ユウジの弟のタクミにはモデルがいて、俳優の窪田正孝さんなんです。私はイケメンの顔の区別がつきづらくて、若手俳優は見分けられないんです(笑)。

 だけど、以前共演した窪田さんだけは認識できるので「窪田さんが大学生だったら」という妄想で書いています。実際の窪田さんは、タクミよりもっとまっすぐで熱い人ですけれど。

 タクミの友達のイチカが、タクミの彼女で、一見いけ好かない女のリカと会話する「パット エミデテ テレルフターリ」も、『マリア様がみてる』や、谷崎潤一郎や松本清張作品のような「女同士」がやりあう物語を書きたい、という願望から生まれました。

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最終更新:1/15(水) 11:01
現代ビジネス

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