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その学習法は正しいか? 「うまくいっている」という幻想に要注意

1/15(水) 10:01配信

現代ビジネス

 前回の記事「【研究結果】本当に何かを習得したいなら、学習ではなく〇〇が効果的」に引き続き、最新の研究成果に基づいた効果的な外国語学習法をご紹介します。

【研究結果】本当に何かを習得したいなら〇〇が効果的

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【本記事のポイント】
・「ブロック練習」とは、同一カテゴリーに属する課題を連続して練習すること、「ミックス練習」とは、様々なカテゴリーに属する課題を順不同に練習することを指す。
・ミックス練習はブロック練習と比較して、様々な知識や技能の習得を促進することが数多くの研究により示されている。
・しかし、多くの学習者はブロック練習の方がミックス練習よりも効果的であると誤解している。それは、ブロック練習の方が「学習がうまくいっている」という手応えを感じやすいからであると考えられる。
・ミックス練習を外国語学習に応用することで、外国語学習も促進される可能性がある。
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ブロック練習とミックス練習

 今回は、「ブロック練習」と「ミックス練習」をキーワードに、効果的な外国語学習法について考えます。

 「ブロック練習」とは、同一カテゴリーに属する課題を連続して練習すること、「ミックス練習」とは、様々なカテゴリーに属する課題を順不同に練習することを指します。

 具体的にイメージしやすいように、米国サウス・フロリダ大学のケリー・テイラー氏とダグ・ローラー氏が行った研究をご紹介します(*1)。彼らの研究では、アメリカの小学生が数学に関する4種類の問題(多面体の辺・面・角・角度の数を求める問題)を解きました。

 参加者は、(a) ブロック練習条件または (b) ミックス練習条件のいずれかに割り当てられました。(a) ブロック練習条件では、「辺の問題を8問→面の問題を8問→角の問題を8問→角度の問題を8問」というように、同じ種類の問題をまとめて解きました。(b) ミックス練習条件では、4種類の練習問題を順不同に解きました。

 練習の1日後に事後テストを行い、学習効果を測定しました。実験結果を以下のグラフに示します。

 上のグラフからわかる通り、練習問題の正答率に関しては、ブロック練習の正答率(99%)はミックス練習の正答率(68%)を大きく上回っていました。一方で、1日後の事後テストでは、この結果は逆転しており、ミックス練習(77%)はブロック練習(38%)よりも2倍以上高い正答率に結び付きました。

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(*1)Taylor, K. M., & Rohrer, D. (2010). The effects of interleaved practice. Applied Cognitive Psychology, 24, 837–848.
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 ミックス練習の方がブロック練習よりも効果的な学習に結びつくというのは、意外な結果ではないでしょうか。

 事実、テイラーとローラー両氏がこの実験結果を論文にまとめて学術誌に投稿したところ、実験結果があまりにも意外なためなのか、4回も掲載を拒否されたという逸話が残っています。

 また、英語には、“One thing at a time and that done well, is a very good thing, as many can tell.”という格言があります(*2)。すなわち、「一つ一つのことをきちんとやり遂げるのが最善の方法であるというのは、周知のことである」という意味で、ミックス練習よりもブロック練習の方が効果的であるという考えを端的に示しています。

 さらに、ブロック練習とミックス練習のどちらが効果的と思うかを学習者に尋ねた研究では、「ブロック練習の方が効果的である」と答えた学習者は6割以上いたのに対して、「ミックス練習の方が効果的である」と答えた学習者は約2割しかいなかったことが示されています(*3)。

 ミックス練習よりもブロック練習の方が効果的であると一般的に考えられているのはなぜなのでしょうか? 
 理由の1つとして、ブロック練習では学習中の正答率がミックス練習よりも高くなるため、問題がスラスラ解けるようになり、知識が身についているという満足感が得られることが挙げられるでしょう。

 ただ、ブロック練習は短期的には学習を促進するように見えても、長期的な記憶保持には実は有害であるという点に注意が必要です。

 このような現象を“illusion of successful learning”(学習がうまくいっているという幻想)と呼ぶ研究者もいます。すなわち、ブロック練習では練習中の正答率が非常に高くなるため、学習がうまくいっているように錯覚してしまいますが、それはあくまでも幻想であり、実際には逆効果であるということです。

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(*2)Woodworth, R. S., & Schlosberg, H. (1954). Experimental Psychology (3rd ed.). London, UK: Methuen & Co.
(*3)Kornell, N. & Bjork, R. A. (2008). Learning concepts and categories: Is spacing the “enemy of induction”? Psychological Science, 19, 585–592.
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最終更新:1/15(水) 10:01
現代ビジネス

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