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日本人の身長が縮んでいる!

1/16(木) 6:02配信

FRIDAY

調査によると、男女ともに1978~1979年生まれ以降、日本人の平均身長が低くなっている。100年前から約15cmも伸びてきた日本人の身長だが、国立成育医療研究センターの資料によると、日本人の平均身長は1978~1979年の男性171.5㎝、女性158.5㎝をピークに、以降20年間低下し続けているという。栄養状態が悪くなったわけではないのに、これはいったいどういうことだろう。

日本人は身長を高くする遺伝子が自然淘汰されている!?

2019年9月、英国のオンライン科学雑誌『Nature Communications』に理化学研究所等の研究チームによる、ある研究結果が掲載された。それは、身長が高くなるのは遺伝的変異のひとつで、日本人は身長が高くなると何らかの不利な影響があり欧米人より身長が低いらしい、というものだ。その「不利な影響」とは? 東京大学大学院でゲノム解析分野の教授を務めている鎌谷洋一郎氏に聞いた。

「日本人約19万人の遺伝子を調べたところ、とても弱い効果ではありますが身長を高くする遺伝的変異が自然淘汰されている可能性があることがわかりました。これは欧州系集団で検証された結果とは真逆です」(鎌谷洋一郎氏 以下同)

我々は、さまざまな遺伝情報を持って生まれてくる。その長さは30億塩基対で、99.5%以上の部分では人の間では互いに同じだが、残り0.5%は異なる。その0.5%のうち、身長に関わる場所は573箇所(最終的には数千になる可能性も)。その中には身長を高くする遺伝子があるが、日本人はこの遺伝子が自然淘汰されている。つまり、身長が低いほうが生存に有利だと考えられるという。

「身長や体重などのように、遺伝的要因と環境的要因によって個人の違いが生じる特徴は“多因子形質”と呼びます。身長は多因子形質の中でも、遺伝的な影響が強く、8割は遺伝因子の影響だと報告されています。残りの2割が栄養状態や健康状態などの環境要素。日本人がもつ遺伝子プール(遺伝子情報の多様性)が戦後に大きく変化したとは考えづらいので、身長が100年前から15㎝伸びたのは、後者の環境要素によるものでしょう」

◆背が高いほど“がん”に、背が低いほど“循環器疾患”になりやすい

身長が高いと生存に不利。どのように不利なのだろうか。

「今のところ、その理由はわかっていません。一つの仮説として、高身長の人はガンになりやすく、低身長の人は心疾患を起こしやすいというデータがあり、それが関係しているかもしれません」

欧米などの研究でも、成人の身長と死亡リスクは関係があるとされていて、高身長ほどがんによる死亡リスクが高くなり、反対に、脳血管疾患や心疾患などの循環器疾患による死亡リスクが低くなることが報告されている。

日本でも国立がん研究センターが調査したところ、同じ結果が得られた。高身長の人ほど発がんに関するインスリン様成長ホルモンのレベルが高くなること、また高身長の人は肺活量が多いので、それが呼吸疾患に予防的作用をするのではないかと考えられている。身長を高くする遺伝子の一つは、コレステロールや中性脂肪に影響するという説もある。

「もう一つの仮説として、身長が大きいということは、細胞の数が多いということなので、がんを引き起こす細胞が発生しやすいのではないかという仮説もあります。しかもその結果として起こる進化的選択圧が欧州と日本とで違っていたということが示唆されました。

結局のところ、まだなにもわかっていません。身長の大規模な遺伝情報の解析をしているのは、現在のところ、日本と欧米だけですが、今後さまざまな地域の遺伝情報を調べていくと、どの因子が関係しているのか、わかる可能性があります」

◆生まれると同時にDNAデータが解析され、大人になったときの大まかな姿が想定できる。そんな時代が、すぐそこに!?

そもそも鎌谷氏らの研究は、病気になりやすいDNAの配列の特徴を見つけることが目的。アメリカでは心筋梗塞などの予測がそれなりの確率で予測できる状態だという。

「1人の体から600万か所くらいの遺伝子情報をとって、複雑なコンピュータ・プログラムを用いて遺伝的な心筋梗塞発症リスクのスコアを計算し、そのスコアを10段階に分けます。いちばん高いグループは、心筋梗塞の発症率が10%、10人に1人発症する。いちばん低いグループは1%、100人に1人発症するというふうに、発症率に10倍の違いがあるという報告がありました。ただ、だれが発症するかはわからない」

100人に1人のグループに自分がいたとしても、発症するかもしれないし、10人に1人のグループにいても発症しないかもしれない。けれど、発症率が高いと言われれば気をつけることはできる。

「ただし、欧米系集団と日本人集団はゲノム構造に違いがあり、欧米で作成した遺伝的リスク計算手法を用いても、日本人の発症を予測できるかどうかは不定です。今のところこのような予測がうまくいくと思われているのは欧米系の白人だけなので、人種差別的状況が起きていると指摘する声もあります」

今までは原因がわかっていなかった難病も、DNAを解析することでわかることもある。治療にも結びつくかもしれない。それは大きな福音ではないか。

「欧米ではすでに100万人を対象とした遺伝情報の取得と分析を始めようとしていますが、現在、彼らの大目標の一つは、非欧州系集団をより多く含めるように、という多様性の確保です。大規模な遺伝情報取得に関しては、日本も追随する動きがあります」

自分がどのような病気にかかりやすいか、どのくらいの身長になるのか、生まれたとたんにわかってしまう未来がくるかもしれない。うれしいような、怖いような。

「遺伝情報から疾患発症を予測できる可能性があるという状況で、100万人単位の遺伝情報の取得が世界的には進んでいます。生まれた時に疾患発症確率がある程度わかる、という未来は、まだ現実化していませんが、割と早く来る可能性がありえます。

このようなことは国民の合意のもとに進んでいくべきで、多くの人にもっとヒト遺伝学を知っていてもらいたいと思っています。遺伝情報は自分だけのことではなく、自分の子どもたちにも関係する。そういうことを知ってほしいですね」

鎌谷氏が研究を始めた15年前には、100万人の遺伝子情報を調べるなど、考えもしなかった、想像をはるかに超えたスピードで研究が進んでいるという。欧米では遺伝情報で「体形」まで予測できると報告されているという。それをどのように活用していったらいいのか、考える時期にきているのかもしれない。少し前のSF小説に書かれていた世界は、すぐそこまで迫っている。

鎌谷洋一郎 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 複雑形質ゲノム解析分野教授。理化学研究所生命 医科学研究センター ゲノム解析応用研究チーム 客員主管研究員。日本人の身長に関わる遺伝的特徴を解明したほか、日本人のたばこへの依存しやすさと本人の遺伝的な特徴に相関があることも明らかにした。

取材・文:中川いづみ

FRIDAYデジタル

最終更新:1/16(木) 6:02
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