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「男が持つ邪悪性をドキュメントしてきた」現代を代表する戦争写真家クリストファー・モーリス

1/16(木) 14:41配信

ニューズウィーク日本版

<弾丸が飛び交う中で決定的瞬間を切り取ってきた。戦争写真家になったきっかけは、子供の頃に見ていた米軍機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」と軍のイベントで出会ったフォトジャーナリストという一般市民。その長いキャリアを通して何を伝えたかったかを聞いた>

今回紹介するInstagramフォトグラファーは、過去30年以上、世界各地の戦場、紛争地域を取材してきたベテラン写真家のクリストファー・モーリスだ。タイム誌の契約フォトグラファーであり、現代を代表する戦争写真家の1人といっていい。

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1958年、カリフォルニア生まれ。現在はフロリダで妻と子供たちと暮らしている。インスタグラムでは、自らの歴史的なアーカイブ写真に加え、近年のニュース・ドキュメンタリー、それに彼にとってはまったく新しいジャンルと思われる作品も発表している。

モーリスの最大の持ち味は、被写体の臨場感を至近距離でありのままに切り取るスタイルだ。ストリートフォトグラフィーの達人たちが、決定的瞬間を逃さず、被写体に気付かれずに間近でシャッターを押すのと根本的には同じである。ただし、環境がまったく違う。弾丸が飛び交い、砲弾の煙が充満する中で、あるいは一歩間違えば簡単に命を落としてしまうような状況下で、彼はそれを行なってきたのである。

彼の戦争写真は、大半は望遠レンズを使って撮影したものではない。かなりの広角レンズで撮影したものだ。90年代には、20ミリから35ミリの広角ズームレンズが多用され始め、それを使って紛争地域でもより迫力を出そうとする写真家が増えた時期だったが、モーリスのパナマやボスニア、チェチェンなどの作品は、まさにその先端を行っていた。彼の撮影スタイルがその時代に多くの影響を与えた、とも言われている。

モーリス自身が戦争写真家になったきっかけは、運命的なものだっただろう。父親は米空軍と契約を結んでいた企業で働いていた。父親を通して子供の頃から軍のパイロットたちに接し、また、米軍機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」に掲載された写真を日ごろから見ていた。それは戦争の匂い、兵士たち、そして死だった。そうした写真になぜか魅せられてしまったのだという。

<ファッション写真やヌード写真も男たちの邪悪性を伝えるため>

その後、フィリピンのクラーク米空軍基地のセレモニーで、撮影中のフォトジャーナリストに遭遇する(当時モーリスと父親は基地の近くに住んでいた)。その時、モーリスは初めて、彼が今まで見てきた戦争写真は兵士によって撮影されたものではなく、一般市民であるフォトジャーナリストによって撮影されたものだと気付いた。それが子供時代のモーリスを戦争写真家へと駆り立てる大きなきっかけになったという。

そんな彼に、戦争写真家として、その長いキャリアを通して、何を伝えたかったのかを聞いてみた。同年代の写真家として、同じ戦場で時に肩を並べて被写体を追いかけたこともある者として、確認したかったからだ。その答えは「写真家」という職業そのもののアイデンティティーにもなると思った。

すると、こんな答えが返ってきた。

「自分の(長年の)ライフワークを見直すと、男が持つ邪悪性をドキュメントしていると実感する。すべての男がそうでないことは知っている。でも、30年以上のキャリアの大半を通し、絶対的な恐怖を無実・無関係の者に与えながら、他の男たちを殺そうと試みてきた男たちを、基本的にドキュメントしようとしてきた」

なぜか動詞の語彙が確定的なものではなかったが、分かるような気がする。写真家は――いや、戦争写真家は、戦争というものを直接的に追っているように見えるが、その本質は結局、人間の性(さが)を本能的に追うことになるからだ。それは時として、あまりにも得体の知れないものなのである。

近年モーリスは、戦争や政治以外にも、ファッション写真やヌード写真も撮影し始めている。ファッション界のある人物からのアドバイスで、自身の写真を異なった方向に進化させるために始めたという。その代表作は「The Night Shadows」。ユングの心理学的な方法で男たちの欲望のシンボルを表わそうとしたものだ。

そして、そうした作品もまた、男たちの持つダークネスを伝えようとするものなのだと。

今回紹介したInstagramフォトグラファー:
Christopher Morris @christopher_vii

Q.サカマキ

最終更新:1/16(木) 19:18
ニューズウィーク日本版

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