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食卓から消える中国の「国民食」

1/16(木) 18:00配信

日経ビジネス

 2019年における中国の「今年の漢字」は「穏(安定)」だったが、市民生活に直結する物価は極めて不安定であった。急激な物価上昇が一般市民の家計を直撃した。

【関連画像】豚肉価格は半年で約2倍に高騰している

 国家統計局が20年1月9日に発表した統計によると、19年通年の消費者物価指数(CPI)は前年比2.9%上昇した。単月で見ると、1月は前年同月比1.7%プラスにすぎなかったが、12月には4.5%プラスに達している。

 その主要因が食品価格の高騰だ。食品及びエネルギーを除く物価指数を見てみると、12月は前年同月比1.4%プラスにとどまっており、1月の1.9%プラスより0.5ポイントほど低い。一方、12月の食品物価は17.4%プラスで、中でも豚肉が97%と異常に上昇している。

 あまりにも異常な豚肉価格の高騰を受け、消費者物価指数を意味するCPIは、「中国豚肉指数(China Pork Index)」と揶揄(やゆ)される。

 高騰の理由としては、アフリカ豚コレラ(ASF)の感染拡大による供給減少の影響が大きい。中国農業農村部によると、初めて発生が報告された18年8月3日から19年11月21日までに、160件のASF感染事例があり、累計119.3万頭を殺処分している。

 実際に北京の豚肉価格を見てみると、19年6月以降の約半年間で2倍近く上昇している。例えば、私が住む団地内にあるローカルスーパーでは、19年6月時点では500g当たり17.8元(約267円)だった豚バラ肉は、12月には33.8元(約507円)に、豚ひき肉赤身も同16.8元(約252円)から30.8元(約462円)になっていた。

豚肉の代わりに鶏卵を使用

 豚肉は、中国の食卓には欠かせない食材で、「豚肉は大多数の国民にとって最も重要な食肉(于康震・農業農村部副部長)」だ。

 私が生活する北京でも豚肉をよく食べる。私のお気に入りは「炸醤(ジャージャン)麺」。ゆでた麺の上にキュウリやもやし、枝豆といった具材をのせ、豚肉をベースにした肉味噌をたっぷりとかけていただく。ゴロゴロ入った豚肉に味噌が絡まり、頬張るとうまみと香ばしさが口いっぱいに広がる。生にんにくをかじりながら、豪快に食べるのが北京スタイルだ。

 この炸醤麺は、普通の北京の家庭であればどこでも作られるようで、私も中国人の友人宅でよくごちそうしてもらう。この北京版「おふくろの味」にもASFの影響が及んでおり、私の北京の友人によると、「豚肉の代わりに鶏肉を使う家庭もあるが、我が家では鶏卵を使う」という。

 このような中、中国政府も疫病対策の強化や豚肉の供給拡大、価格の安定化に関するさまざまな政策を実施している。

 国務院が19年9月に公表した「豚の生産安定と産業高度化の促進に関する意見」では、補助金支給や備蓄冷凍豚肉の放出といった施策が盛り込まれた。実際に、10月1日の国慶節前に、3回に分けて合計3万トンの国家が備蓄していた冷凍豚肉を市場に供給した。

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最終更新:1/16(木) 18:00
日経ビジネス

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