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オーストラリア森林火災、「ウォンバットが野生動物を救出」は本当?

1/17(金) 16:20配信

ニューズウィーク日本版

──ウォンバット、野生動物を誘導して避難させる?

昨年9月に始まったオーストラリアの森林火災は、広大な土地と10億匹と言われるほどの野生動物を焼き尽くしてもなお、収束する様子は見えてこない。そんななか、ウォンバットが、野生動物を自分の巣にかくまって火災から助けているというニュースがソーシャルメディア(SNS)で拡散された。中には、「政府よりもリーダーシップを発揮している」と主張するツイートもあった。

● 動画:ウォンバットの巣穴にコアラやうさぎが出入りする様子

専門家はこうした話の一部については「ウォンバットの生態からしてあり得ない」と否定しているものの、完全な作り話というわけではないとの考えを示している。ウォンバットが地中に掘る巣が、小動物にとって森林火災からの「避難所」として機能しているというのは本当らしい。

ウォンバットはオーストラリア固有の動物で、コアラやカンガルーなどと同様、有袋類の哺乳類だ。体長70~120センチと比較的大型で、普段は地中に穴を掘り、その中で暮らしている。その巣穴は非常に長く、ところどころが部屋になっているという。

SNSで拡散された内容は、「ウォンバットは、森林火災で行き場をなくして自分の巣穴にやってきた小動物を受け入れている」というものと、「まるで羊飼いの犬のように、小動物を自分の巣穴に誘導してあげている」という2点だ。

■ 「近眼のウォンバットに誘導は無理」と専門家

グリーンピース・ニュージーランドは9日、インスタグラムに次のように投稿した。

「オーストラリアからの報告によると、数えきれないほどの小動物は、巨大で複雑な巣穴をシェアしてくれるウォンバットのおかげで、死から逃れられているようです」

この投稿には当初、「ウォンバットが“羊飼いのように誘導している”様子が観察されたとの報告もあります」と書かれていたが、現在はこの文章には打ち消し線が引かれ、「オーストラリアで投稿されたSNSからシェアした話でしたが、間違いであることが分かりました」とカッコ書きで説明が加えられている。

豪慈善事業団体ウォンバット・ファウンデーションの代表ジャッキー・フレンチ氏が、英ポピュラーサイエンス系ウェブサイト「IFLS」にした説明によると、ウォンバットはかなりの近眼で、食べ物と土しかほとんど見ていない。他の動物を誘導することは無理であろうし、自分もウォンバットのそんな様子をみたことはない、と同氏はIFLSに話した。

英ウェブメディアUNILADは、オーストラリアで以前、別の森林火災が発生した際に、さまざまな小動物がウォンバットの巣に隠れて焼死を免れたことが観察されており、今回の話は、そこが出どころではないかとしている。ただし今回の森林火災においては、ウォンバットのそのような様子は記録されていない。

■ ウォンバットの巣穴から小動物がごそごそと……

豪メルボルン大学は、今回の森林火災が始まる前の昨年4月、1本のビデオをYouTubeに投稿していた。同大学の学生らがウォンバットの巣穴を観察したところ、さまざまな野生動物が穴から出てきたというものだ。約1分半の動画には、午後9時半から午前2時ごろまでの約4時間半の間に、うさぎやコアラが、ウォンバットの巣から出てくる様子が収められている。

メルボルン大学のサイトによると、ウォンバットは通常、複数の巣穴を作り、そのどれかで過ごしている。生涯の3分の2を巣穴で過ごすが、集団ではなく1匹で行動する生態であるため、その広い巣穴の中には、通常は1匹しかいない。大きく安全で快適な巣穴は、他の小動物にとっても捕食者から逃れる避難場所として使われることもあるようだ。

ただし、巣穴に入ってきた小動物にウォンバットがどう反応するかについては、専門家によっても見解は異なる。ウォンバットの巣穴の動画を撮った学生らの指導者だったキャス・ハンダサイド博士は、ウォンバットは怒りっぽいため、巣穴で他の動物と遭遇したら追い出すだろうと話している。

前述のフレンチ氏は、ウォンバットが危機に際して、他のウォンバットや蛇、フクロネコ、ポッサム、バンディクート、ハリモグラ、フサオネズミカンガルーなどと自分の巣穴をシェアしているのを見たことがあるとIFLSに話している。ただしこれはあくまでも非常事態のときに限られる。またウォンバットがこれらの動物を自分の巣穴に率先して誘導することはないし、他の動物も巣穴の存在を知っているはずなので、ウォンバットによる誘導は不要だろうと同氏は加えた。

松丸さとみ

最終更新:1/17(金) 16:20
ニューズウィーク日本版

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