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猛烈な胃痛のとき、医師が「緑内障ですか」と聞く意外な理由

1/19(日) 11:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

年齢を重ねれば、老眼や白内障なども始まり、視力の衰えをよりいっそう感じることでしょう。「年だから仕方がないか…」と、納得してしまいそうになりますが、思わぬ病気を発症している可能性に、気づいているでしょうか。特に「急性緑内障発作」の場合は、激しい痛みを伴い、最悪の場合失明に至る危険性もあるため、十分な注意が必要です。本連載では、はんがい眼科・板谷正紀院長の書籍『「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋して、眼病の知識をわかりやすく解説します。

失明の危険性が高い「急性緑内障発作」…発症の原因は

◆母の愛が緑内障発作を引き起こす?

どのような時に急性緑内障発作を起こすのでしょうか?

「かあさんは夜なべをして手ぶく~ろ編んでくれた~♪♪」という歌がありますが、昔日本が貧しかった頃、夜ほの暗い室内で息子のために長時間下を向いて編み物をする母親、これこそが急性緑内障発作を起こしやすい状況なのです。

つまり、「暗い」と瞳は中等度散瞳して隅角(房水の出口)が狭くなります。「下を向くと」水晶体は重力で前に移動してさらに隅角は狭くなるのです。お母さんは、知らずとはいえ、このダブルのリスクを冒して息子のために手ぶくろを編んでくれたのです。

現代でも、家事で下を向きながら長時間作業をすることも多いと思います。料理、掃除、洗濯など。電化製品の進歩で昔ほど下向く時間は長くなくなり急性緑内障発作のリスクは減っているのかもしれません。それでも料理中、目が痛くなった患者さんが当院に来院されたこともあるので、やはりリスクはつきものなのです。

また最近普及したスマホは下向きを増やしているのかもしれません。しかし、スマホ中に緑内障発作を起こした患者さんにはまだ出会っていません。スマホをする高齢者がまだ比較的少ないためだけなのかどうか今後わかってくるでしょう。

◆お腹が痛いときに緑内障だと飲めない薬がある?

狭隅角(隅角の部分が狭くなっている状態のこと)の人は、使えない薬が多い、体位にリスクがある、眼科で瞳を開く検査(=散瞳検査)が受けにくいなど、危険に満ちています。

例えば、腹痛で救急に駆け込むとブスコバンというお薬を投与されますが、狭隅角の人はこのお薬を使うと緑内障発作を起こすリスクがあります。他にも、狭隅角の人が使えないお薬はたくさんあり「緑内障の人禁忌」と書いてあります。

このようなお薬は、実は緑内障の一部である狭隅角や閉塞隅角の人が使えないだけで、緑内障の大部分である開放隅角緑内障の人は使っても問題ないのです。中年期以降になりましたら自分が狭隅角かどうかは知っておいた方が良いでしょう。

ところで、緑内障は「開放隅角」と「閉塞隅角」に分かれます。どれも同じ緑内障じゃないかと思われる人もいるでしょう。しかしこの区別は実はとても大切なのです。

急に猛烈な胃痛に襲われて救急車で運ばれたとき、たいていの医師は強力な鎮痙剤であるブスコパンの投与を考えます。そしてその際には必ず「緑内障がありますか」と聞きます。

このブスコパンは抗コリン剤とよばれる薬の一種で、閉塞隅角緑内障や狭隅角症の人に投与すると、急性緑内障発作を誘発する恐れがあるのです。しかし、たいていの医師は「緑内障はありますか?」とはきいてくれますが、「あなたの緑内障は開放隅角緑内障ですか、それとも閉塞(狭)隅角緑内障ですか」とはきいてくれません。たとえ質問してくれたとしても自分が狭隅角かどうか知らなければ答えようがありません。困りますね? 

開放隅角なのに緑内障があると答えると医師はこの特効薬をあきらめ、次善の策を検討することになり、あなたは当分、猛烈な胃の痛みに苦しむことになります。

ところが、もしあなたが開放隅角緑内障で抗コリン剤と緑内障の関係について正しい知識をもっていれば、ここは自信をもって「いいえ」と答え、早くラクにしてもらうことができたのです。

◆開放隅角緑内障なら抗コリン剤は投与してよい

抗コリン剤は副交感神経を抑制し交感神経を刺激する効果があります。投与されると瞳孔括約筋が弛緩し瞳が開く散瞳がおき、虹彩と水晶体の間の房水の通り道が狭くなり、瞳孔ブロック(水晶体と虹彩の間の房水の流れが遮断されること)を誘発するため、急性緑内障発作をおこす恐れがあるのです。

開放隅角緑内障の場合は、こうした隅角の異常はありませんから、抗コリン剤を投与しても問題はなかったのです。

この抗コリン剤、じつは胃けいれんの特効薬であるだけでなく、表のようにさまざまな症状にきく薬として広く身近に使われています[図表1]。

さらに話を面倒にしているのは、眼科以外の医師たちにとって開放隅角と閉塞隅角(狭隅角)の違いはほとんと認識されていないことです。しかも、自分が開放隅角か閉塞隅角(狭隅角)かを知っている人も少ないのです。

たとえば眼科で眼底検査をおこなう際に薬で瞳孔を開く(散瞳)必要がありますが、あれも抗コリン剤のひとつです。私は研修医のころから「散瞳する前にまず隅角をチェックしろ」と繰り返しいわれて習慣になっています。

もし閉鎖隅角や狭隅角だと散瞳剤の作用で急性緑内障発作をおこす可能性があるのです。

緑内障で治療を受けている患者さんも、自分が開放隅角緑内障か閉塞隅角緑内障かをご存じない方が意外と多いことに驚かされます。思い出してください。眼圧が上がる原因がある場合、緑内障治療の第1選択は原因解除なのです。閉塞隅角があるなら隅角を開大させる治療が第1選択なのです。

抗コリン剤がつかえるかどうかは、場面によっては重大な結果をもたらしますから、緑内障の方はもちろん、眼科にいかれることがあったら、ぜひ確認しておくといいでしょう。

繰り返しになりますが、抗コリン剤は緑内障に悪影響があるのではなく、「閉塞隅角(狭隅角)」という状態が問題なのです。ですから、それまで視野の狭窄など緑内障の症状はないが隅角の状態としては閉塞隅角(狭隅角)だった人は、抗コリン剤の投与によって急性緑内障発作をおこすことは十分考えられます。

もし自分が閉塞隅角(狭隅角)だとわかったら、さきほどの医師の「緑内障がありますか」という質問には「はい」とこたえるべきなのです。

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最終更新:2/3(月) 17:00
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