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相続発生…長男「早く実家を明け渡して」に母は従う必要ある?

1/19(日) 9:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

「相続トラブル」は、もはや富裕層だけの問題ではなくなりました。お金が関わった瞬間に豹変する家族を知り、絶望に暮れる例が相次いでいます。そこで本記事では、遺産相続の法律問題を中心に取り扱うCST法律事務所代表・細越善斉弁護士が、相続トラブルの事例を紹介し、具体的な解決策を提案します。

これまで「妻の居住権」は保障されていなかった

【相談事例】

父の相続です。遺言はありません。相続人は、母と兄(長男)と私(次男)の3人です。遺産は、生前に父と母が住んでいた実家の戸建て(時価2000万円)と預金2000万円です。

母は、父が亡くなったあとも実家に住んでいますが、「1人では実家に住みたくない。預金を相続してそのお金で施設に入りたい」といっています。一方兄は、「長男として実家を相続したい。母には預金を渡すことで構わないので、母には早く実家を明け渡してほしい」と母の退去を急かしています。

私は、これまで両親が住んでいた実家なので、せめて遺産分割協議が成立し、母が施設に移るまでの間は、母には引き続き実家に住んでほしいと思っています。母は早急に家を出なくてはいけないのでしょうか?

夫が所有する建物に妻が同居している場合、法律的には、「妻は夫の占有補助者として居住建物を使用している」と考えられることが多いです。このようなケースでは、夫が死亡することによって、妻は占有補助者としての地位を失うことになります。結果、居住建物を使用できなくなってしまうのです。

もっとも、相続の発生により、ただちに居住建物から出ていかなければならないのは、夫と同居していた妻にとってあまりにも酷といえます。そこで、判例は、以下のとおり判示し、夫と同居していた妻にも、特段の事情がない限り、遺産分割が終了するまでの間は、使用貸借を根拠に居住権を認めてきました。

【判例】

『共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認される』(最判平成8年12月26日)

しかし、上記の判例理論は、被相続人の意思を合理的に解釈した結果です。もし、被相続人が「私が死んだら妻は自宅からすぐに出ていくように」との意思を生前に表示していた場合、または、遺言で居住建物を第三者に遺贈してしまった場合など、判例がいう「特段の事情」があるような場合には、相続開始後の使用貸借契約の成立が推認されず、やはり妻の居住権は保護されていませんでした。

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最終更新:1/19(日) 9:00
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