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足元の教育が危ない―大学入試改革よりも公教育の立て直しを

1/20(月) 15:02配信

nippon.com

板倉 君枝(ニッポンドットコム)

政府が推し進めていた大学入試改革が土壇場で頓挫した。「入試を変えれば教育が変わる」という発想自体が間違いだと批判する教育社会学者に、混迷する入試改革の背景と教育現場が直面する危機について聞いた。

崩れた改革の2本柱

1990年に導入された大学入試センター試験は1月実施の今回で幕を閉じ、現在の高校2年生が受験することになる2021年入試から大学入学共通テストに代わる。だがいま、センター試験を止めること自体の意味が問われている。

19年末になって、政府がこれまで推し進めてきた大学入試改革が事実上覆された。まず11月1日萩生田光一文部科学相が英語民間試験の活用延期を表明。12月17日には国語・数学の記述式試験問題導入も見送りが決まり、改革の2本柱があっけなく崩れた。共通テストの内容をどう再構築するのか、現時点では不透明だ。

英語民間試験の活用は、「身の丈に合わせて勝負して」と萩生田大臣がテレビ番組で発言したことがきっかけで見送りに追い込まれたが、もともと反対論が多かった。スピーキング重視への問題点を指摘する声は以前から強かったが、民間試験に関しては地理的・経済的な理由で受験機会に格差が生じる点が問題視されていた。また、記述式問題に関しては採点の質や公平性の確保などへの懸念が解消できないとされた。これも当初から多くの人が指摘する問題点だった。

政府は英語4技能「読む・聞く・話す・書く」の評価方法と国数の記述式問題の在り方を約1年かけて議論し、新しい英語入試制度は24年度実施を目指すとしている。記述式問題に関しては導入の期限を示していない。

繰り返される「知識偏重」への反省

大学教授や予備校講師などからなる「入試改革を考える会」は、2019年12月23日に大学入学共通テストの実施延期を求める声明文を文科省に提出した。東京大学大学院の中村高康教授は「考える会」呼びかけ人の1人だ。

「19年8月に大内裕和さん(中京大学教授)、吉田弘幸さん(予備校講師)らと『入試改革を考える会』を組織しました。SNS上で危機感を共有したのがきっかけです。特に当初は英語の民間試験はどうなるのかに関して大きな危機感があった」と中村教授は言う。「制度設計がちゃんとできていないから、どこかで立ち止まるだろうと思っていたのに、このまま突っ走りそうだという状況になった。それで急きょ『考える会』を立ち上げ、11月、12月に入試改革の見直しを求める声明を政府に出したわけです」

そもそも入試改革はどんな背景で推し進められたのか。

「受験勉強といえば、歴史の年号や英単語暗記などを思い浮かべる人が多い。いままでは知識の詰め込み、暗記・再生だったという反省が、改革を推し進める政治家や官僚側にありました。政策の立案過程では、理念が先行し現場や専門家の意見が十分に吸い上げられなかった」

そしてその「理念」自体が、決して中身の濃いものではなかったと指摘する。

「改革方針を決めた文科省の中央教育審議会答申(14年)は、 知識の暗記・再生への批判を繰り返し提起しています。それではこれからの時代に対応できない。知識をため込むのではなく、新しい知識を作り出すこと。受け身で学ぶのではなく、積極的、『主体的態度』を打ち出すこと―それが大きな方向性でした」

知識の暗記・再生への偏りに対する反省は、大本をたどれば1980年代の臨教審(臨時教育審議会)答申に行き着く。画一的な教育からの脱却を目指し、個性重視の原則のもとで「国際化、情報化等への対応」をうたった。そこからさまざまな教育改革が派生していく。「30年以上前から、これまでと異なる新しい時代に対応した“能力”を標ぼうする『改革』の理念が繰り返されてきました。しかしそれは古くからのありきたりな考え方を別な表現で言い換えたに過ぎず、しかも基礎となる現状認識がずれているのです」

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最終更新:1/20(月) 15:02
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