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デザイナーが再発見した銭湯の価値とは?

1/20(月) 12:23配信

Wedge

労働時間の健全化

 まずは、「家業を事業に変える」こと。銭湯の多くは家族経営で、高齢化が進んでいる。長時間労働でキツイ仕事のため、子どもはまず後をつがない。中規模のマンション用地に最適なため、経営者夫婦が亡くなると、廃業して銭湯は姿を消していく。つまり、コミュニティーの「場」が年々消えていくわけだ。この家業を株式会社などにして、従業員を雇い、事業として経営していく形に変えなければ、もはや銭湯は存続できない、というのが日野さんの考えだ。

 「1日13時間働いて、週に1回の休みしかなければ、仕事に追われてインプットしている時間がない」と日野さん。経営をしようにも、世の中のトレンドや若者のニーズを捉えて、それを事業に生かしていくことはできない、というのだ。喜楽湯ではまず労働時間の健全化に取り組んだ。今は番頭3人とアルバイト10人前後の体制だが、これで週休2・5日を実現した。

 二つ目は事業として自立することだ。実は、銭湯はいまだに「価格統制」が残る数少ない業界だ。都道府県が決めた入浴料金を守らなければならない。つまり、工夫をして高付加価値化を図ろうにも値段が決まっているのだ。一方で、行政から何とか経営が成り立つくらいの「補助金」が出ている。努力をしなくても営業を続けていれば食べていけるため、企業ならば当然の創意工夫を排除する仕組みになっているわけだ。

イベントを通じて敷居を下げる

 喜楽湯では、銭湯を「場」にして、様々なイベントを実施している。企業とのコラボレーションで企画を行い、入浴料としてではなく、様々な収入源を広げていく。初めは東京都浴場組合など既存銭湯の経営者に異端視されたが、最近は新たな取り組みとして理解してくれる幹部も増えた。

 例えば、キリンビールなどビールメーカーとコラボレーションした「銭湯×生ビール」という企画では、銭湯の休憩所に生ビールの全自動サーバーを置いて有料で販売する。風呂上がりに美味い生ビールが飲めるとあって、入浴客も増え、飲料の売り上げも増加する。企業にとっては自社製品の格好のPRになるわけだ。喜楽湯だけではなく、協力してくれる銭湯にイベントとして持ち込むのも日野さんの仕事だ。

 11月30日、東京・渋谷区の銭湯「改良湯」。フットサルの試合を終えた若者たちが、入浴に訪れた。この日は定休日で貸し切り。汗を流した後は、脱衣場に設けられた宴会場で打ち上げが行われた。改良湯は創業103年の老舗銭湯で、経営者は4代目の大和伸晃さん、46歳。渋谷の銭湯組合の会合で日野さんと知り合い、その後、10回近くイベントを開いている。

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最終更新:1/20(月) 12:23
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