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【NBAスター悲話】モックムード・アブドゥル・ラウーフ――難病ゆえにトップアスリートに上り詰めた哀しき求道者【前編】

1/20(月) 17:08配信

THE DIGEST

 クリス・ジャクソンはもしかしたら本当に病気なのかもしれない、そう周りが真剣に思い始めたのは、彼が17歳の時だった。小学4年を落第し、中学1年は特殊学級で過ごした。それでも、ジャクソンは他の子よりも少し頭の回転が遅い、単なる変わり者と思われていた。ところが、その様子があまりに常軌を逸していたため医者に連れていったところ、トゥレット症候群と診断されたのだった。

 ジャクソンは1969年、アメリカ南部ミシシッピ州ガルフポートに、シングルマザーの元、3人兄弟の1人として生まれた。3人はそれぞれ父親が違い、ジャクソンの父は白人だった。彼の家系には風変わりな者が多く、病院のカフェテリアで働く母も普通ではなかった。職場に向かう途中に家の火元や戸締りなどが気になると、そのつど確認のため家に戻った。職場に着くまでに10回以上往復することもザラだった。

 また、彼女は上等なベッドを持っていたにもかかわらず、そこで寝る代わりにカウチや床で寝た。なぜそうするのかは誰にもわからない。ジャクソンがプロ選手となり、最高級のベッドを買い与えてもその習慣は変わらなかった。彼の叔父“クレイジー”・ウィリーもまったくの変わり者で、最期は自分の頭を銃で撃ち抜いて死んでいる。

 ジャクソンは子どもの頃から自分が普通ではないことに気づいていたが、自分でそれをコントロールすることは不可能だった。鏡の前で、ビクビクと激しく動く自分の身体から何時間も目を離すことができず、夜ベッドに入るまで泣き続けたこともあった。

 ジャクソンを最も悩ませた症状は、あるひとつのことを否応無しにやり続けてしまう、というものだった。それは大人になっても変わらなかった。例えば――。彼は10分以上もの間、靴の紐を締め続ける。なぜか? 全部結び終えるまでに、片方の靴紐がもう片方に触れてしまったら最初から結び直さなければならないのだ。なぜそうしなければならないのかは、本人にもわからない。とにかく、イライラしながらも完璧に結び終えるまで止めることはできなかった。

 シャツの裾をズボンに入れる作業にも10分以上要する。裾を完璧に入れられたと感じるまで、その作業は続く。また、彼は真っ赤に熱した電気コンロを素手で触る。まったく意味のない行為とはわかっていても、繰り返し何度も触らずにはいられない。完璧に触れたと実感できるまで……。

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最終更新:1/24(金) 17:11
THE DIGEST

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