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野良犬も人間の身振りを自ずと理解する、最新研究

1/21(火) 17:38配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

世界に最大3億匹、人と野良犬の「もっと平和な共存」に役立つとインドの研究者

 人間は1万5000年前からイヌを家畜化し、私たちの「友」となるように、そして人間の感情を読み取ることができるように改良し続けてきた。

【動画】実験で人間の身振りを理解したインドの野良犬

 最新の研究により、人に飼われたことのない野良犬でも、私たちのジェスチャーを理解できるということがわかった。成果は1月17日付けで学術誌「Frontiers in Psychology」に発表された。

 世界には多く見積もって3億匹の野良犬がおり、そのうち約3000万匹がインドにいると推定される。野良犬は人間に危害を及ぼすことも多い。世界保健機関(WHO)によれば、インドでは子どもを中心に毎年約2万人が狂犬病で命を落としており、野良犬は公衆衛生上のリスクになっている。

 これが野良犬の管理に関する世論を二極化させており、一部の人々が非人道的な方法で野良犬を殺すことにもつながっていると、インド科学教育研究大学コルカタ校の動物行動学者アニンディータ・バードラ氏は話す。そのため、人間がなでて餌をくれようとしているのか、それとも傷つけようとしているのか、野良犬はいつも疑心暗鬼になるほかないという。

 だからこそ、野良犬の行動をもっとよく知ることが、人間と彼らの間にある問題を解決するために欠かせない。野良犬の研究を10年間続けてきたバードラ氏はそう説明する。

 氏が最近行った実験で明らかになったのは、多くの野良犬は、人間が物を指差しているとき、どこを見ればいいのかをわかっているということだ。これは、訓練をしなくても人間の意図を読みとる能力が、犬に先天的に備わっていることを示唆している。

 食べ物を野良犬に分け与えようとして噛まれ、狂犬病に感染してしまう子どもたちも多い。この研究結果は、大人たちのみならず、そういった子どもたちにも、野良犬との「もっと平和な共存」のしかたを教育することに役立つかもしれないとバードラ氏は話す。

指差し合図を理解する

 今回の研究でバードラ氏と共同研究者たちは、インドの数都市で、単独行動の野良犬160匹を対象に実験を行った。まず1人目の実験者が、ふたつきの容器を2つ用意し、一方には生の鶏肉を入れ、他方には食べ物のにおいだけを付けておく。次に、どちらに鶏肉が入っているかを知らない2人目の実験者が、2つの容器を犬から1.5mほど離れたところに置き、片方の器を指差す。指を差す時間の長さは、1秒だけと、実験の間ずっと差し続ける場合の2通りに分けた。なお、指を差す際に、実験者が器に手を近づけるような動作はしなかった。

 野良犬のうち半分ほどは、実験者に近づこうとしなかった。多くの個体が不安げで、おそらく過去に人間との間で望ましくない出来事があったのだろう、とバードラ氏は話す。

 実験者に近づいた野良犬のうち、80%ほどが指差した方の器に行った。これは、彼らが人間のジェスチャーを理解したことを示す。器が空だった場合、その後、野良犬は指差しに従わなくなりがちだった。

 以前に行われた研究では、実験者は器のすぐ近くにいた。バードラ氏によると、人間が器から少し離れた場所にいるようにしたことで、野良犬が「人間の意図を判断し、そのうえで意思決定する」能力を測れるようになった。さらには、指差し合図に従うことで、餌にありつけたか否かという、新しい情報を処理する能力も試すことができた。

 全体としてこの研究が示すのは、たとえ人間に嫌な思いをさせられた経験を持つケースが多くても、訓練を受けていない野良犬たちは人間に親しみを覚え、人間を理解できるということだ。

「この研究は、人間の基本的なジェスチャーを理解し利用する能力において、野良犬は他のイヌと同等だということ、そして多くの人が想像する通り、彼らは賢いのだということを示すさらなる証拠です」と米デューク大学犬類認知能力研究センターの設立者兼所長のブライアン・ヘア氏は評する。

野良犬にも敬意を

 野良犬は近年になって出現したわけではない。古代インドの文書「ヴェーダ」には、良き家長であるための指南の一つとして、野良犬などの動物に残り物をやるようにと書かれている。

 飼い犬より厳しい生活を送りながらも、野良犬は「産業革命から高速道路に至るまで、あらゆる」人間社会の変化に適応してきた、とバードラ氏は話す。

 そうした適応能力やへこたれなさ、それに高度な認知能力は、野良犬が他のイヌと大きく変わらないということ、そして「私たちが敬意を持って接すべき対象であるということ」を意味するのだ、とヘア氏は付け加えた。

文=Liz Langley/訳=桜木敬子

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