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40億年前に生命がどのように誕生したのか? 2人の生物学者の対論

1/21(火) 7:00配信

Book Bang

 囲碁や将棋の棋士には、極めて難解な局面でも適当に切り上げることをせず、持ち時間を惜しまず投入して延々と読みふけってしまうタイプの者がいる。ある面では愚行ともいえるが、手の届かぬ真理に一歩でも近づこうと身をよじるように考え詰める姿は、見る者の胸を打たずにおかない。

 本書、山岸明彦、高井研『対論!  生命誕生の謎』は、今から四〇億年前に生命がどのように地球上に誕生したかを研究する、二人の生物学者の対論だ。直接には何ら役立つものを生み出さない、そしておそらく永遠に明確な答えが出ることのない問題に、人生をかけて立ち向かう彼らの姿は、冒頭に挙げた棋士たちを彷彿とさせる。

 著者のうち山岸は、生命は陸上の温泉で最初に生まれたと考え、高井は深海の熱水活動域で誕生したと主張する。進化や生命の定義さえも異なる両者が意見を戦わせ、時に激しく対立し、時に互いに触発される様子は、名人同士の対局譜を見るかのようにスリリングだ。

 話題は地球外生命の存在、人類の宇宙移住計画にまで及ぶ。両者の見解はあちこちで食い違い、現在の科学で解明できない部分の多さを改めて印象づける。

 かなり高度な内容ではあるが、用語の解説なども適宜挿入されており、読みやすく仕立てられている。科学とは、文明とは何か、我々はどこから来てどこへ行くのか。読み手の視野を広げてくれる、新書ながらスケールの大きな一冊だ。

[レビュアー]佐藤健太郎(サイエンスライター)
1970年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職、東京大学大学院理学系研究科広報担当特任助教等を経て、現在はサイエンスライター。2010年、『医薬品クライシス』で科学ジャーナリスト賞。2011年、化学コミュニケーション賞。著書に『炭素文明論』『「ゼロリスク社会」の罠』『世界史を変えた薬』など。

新潮社 週刊新潮 2020年1月16日迎春増大号 掲載

新潮社

最終更新:1/21(火) 7:00
Book Bang

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