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『スカーレット』における黒島結菜の役割とは? 悪意のない無邪気な“恋敵”という新しい存在

1/22(水) 6:03配信

リアルサウンド

喜美子ではなく三津が八郎の思いを見抜いてしまう

 八郎を驚かせた初めての作品における「僕とは違う作り方」は、たくさんの球体(まる)を作り寄せ集めることでひとつの器を作る方法だった。でもこれは、「喜美子が天才だから閃いた」というより、喜美子の発想の発端が恐らく息子・武志の初めて作った作品「夢みるまるまる」にあることから、彼女の作品作りの裏には育児という経験が裏打ちされていることがわかる。また、八郎が一瞬怯えるような表情を見せた、喜美子の得た知識は、八郎を手伝いながら吸収した知識であり、全ては八郎と会い、結婚し、共に生きたから培った「才能」だ。それを、一番近くで見てきたはずの八郎が気づくことができない。もしくは、それさえも「才能」のうちの一つだとわかった上で、前に進める「正しい喜美子」が苦しいと言うのなら、それは本当に救いようがない。

 だが逆に、喜美子もまた、八郎のことを気づくことができない。作品作りに悩む八郎が深野(イッセー尾形)の年賀状の絵に一瞬目を遣る姿を、喜美子、三津がそれぞれ見ているのに関わらず、喜美子は八郎の思いを見抜けず、まだ出会って間もない三津がその思いを言い当ててしまう。

 それでも夫婦は、開きつつある心の距離を必死で見ないようにしながら、「夫婦ノート」に将来設計を祈りのように刻み、変わらずふざけ、笑い、相談し合うことで、夫婦を続けている。それは、瑞々しく燃え上がった恋愛の先を行く2人が、この先も長く夫婦で居続けるために必要な努力なのかもしれない。

 信作(林遣都)の「そのうち絶対爆発するで」という警告をどこかで予兆のように感じつつ、開花しようとする喜美子の陶芸家としての能力と、それを恐れているかのような夫・八郎との関係性の持続という2つの事柄の両立を、ただただ祈らずにはいられない。

藤原奈緒

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最終更新:1/22(水) 6:03
リアルサウンド

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