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コロナウイルスと闘う医師が伝える武漢の惨状

1/22(水) 12:30配信

JBpress

 もうそろそろ時効だと思うので告白するが、私は昨年12月30日、つまりいまから3週間ほど前、現在アジアを恐怖に陥れている新型コロナウイルス感染症の発生地である中国湖北省武漢を通った。2018年9月に開通した、香港西九龍駅8時5分発、北京西駅17時1分着という、一日一本の中国縦断高速鉄道(新幹線)「G80」に乗ったのだ。中国は日本の26倍も国土があるので、高速鉄道が網の目のように敷かれつつある現在では、飛行機よりもはるかに愉しい旅ができる。

【写真】上海の肇嘉浜路で監視カメラを設置する作業員

 このG80が、お昼過ぎの12時38分に停車したのが、武漢西駅だった。結構多くの人が降りて、多くの人が乗って来た。一等車は2座席が一組になっているが、私の隣席には人が乗ってこなかった。

 武漢西駅には、3分ほど停まっていた。この都市には、過去10年に10回以上訪れていて、懐かしい思い出に浸っていた。

 だが、まさか2020年が明けるとともに、この地で恐ろしいコロナウイルスが蔓延するとは思いもよらなかった。2週間何もなければ感染していないとのことなので、重ねて言うが、私はもう時効である。

■ SARS流行のようなことはもう起こらないと思われていたが

 当初、1月25日の「春節」(旧正月)を前に、中国政府がこの新型肺炎を軽視していたこともあり、これほどの「大事」になるとは思っていなかった。21世紀に入って、中国の衛生状況は格段に改善しており、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)のようなことはもう起こらないと信じていたのだ。

 ところが先週になって、ある北京の大企業に勤める中国人の知人が、次のように言ってきた。

 「春節前に、わが社の全国支店長会議を開いたが、自分の隣に座ってきた支店長に聞いたら、何と武漢支店長だという。これはまずいと思い、自由席だったので、慌てて席を移った。ところが次に隣に座った支店長も逃げ、結局、武漢支店長だけは、部屋の片隅に『隔離』されてしまった。

 しかもその武漢支店長は、『今回の新型肺炎は、2003年のSARSの被害を上回るだろう。武漢市民は、いろんな噂を聞きつけて、そう言っている』と断言していた」

■ コロナウイルスの発症者か急性肺炎か、見極めで混乱する医療現場

 SARSは、2002年の年末から2003年4月にかけて、中国広東省から首都・北京に広がり、計8096人が感染、774人が死亡した。北京はちょうど、江沢民政権から胡錦濤政権に移行する全国人民代表大会が開かれていた頃で、胡錦濤政権は発足早々、ピンチに立たされたのだった。

 胡錦濤政権に較べたら、いまの習近平政権は相対的に信用が置ける。その意味するところは、「虎(大幹部)も蠅(小役人)も同時に叩く」をスローガンに、不正腐敗の徹底防止に腐心しているからだ。この年末年始に北京へ行ったら、「虎」と「蠅」に加えて、「『蚊』も同時に叩く」となっていた。「蚊」とは末端役人のことだという。

 ともあれ、それほど厳格な政権なので、どの都市の幹部も、「もし症例数を隠蔽して自分が逮捕されたらどうしよう」と考えるのだ。それで自分の上司に相談する。上司も同じことを考えるから、さらに自分の上司に相談する。そうやって誰もが責任を上部に委ねようとして、最後は習近平主席のところまで上がるのだ。

 トップに立つ習近平主席としては、「症例数を隠蔽しろ」とは言えない。だから1月20日、視察中の雲南省から、「適切に対処せよ」と指令を出したのだ。

 これによって、中国全土で多くの役人や病院関係者などの「正月」が吹っ飛んでしまったが、トップの指令が出た以上、今後は「意図的な隠蔽」は起こらないはずだ。中国政府は22日に初めて記者会見を開き、中国国内の感染者は440人、死者は9人と発表した。

 ただし、新型のコロナウイルスなので、その発症者なのか、それとも単なる急性肺炎なのか区別がつかないといった現場の混乱は、大量に発生しているだろう。

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最終更新:2/3(月) 15:30
JBpress

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