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職を転々としてきた就職氷河期世代が「ウーバーイーツユニオン」で自己肯定感を回復するまで

1/22(水) 8:33配信

HARBOR BUSINESS Online

「お前の代わりはいくらでもいる。だから休んでもいいんだよ」氷河期世代とプラットフォームビジネスの未来

 多くのマスメディアや評論家の理解に反して、ウーバーイーツユニオンは、基本的に現在の働き方それ自体は肯定的に捉えている、と土屋氏は語る。実際、ユニオンはけして労働基準法における労働者としての待遇、たとえば最低賃金や有給休暇等を会社に求めているわけではない。個人事業主である配達員を正社員として採用せよと求めているわけでもない。彼らが要求しているのは、かいつまんで言えば、人権を持った存在として自分たちが扱われることだ。当たり前の労災対応を行わなかったり、一方的に報酬を改定したりすることは、ビジネスモデル以前の問題として、本質的な人権に関わる問題なのだ。

 土屋氏が考える理想のモデルとしてのプラットフォームビジネスは、(現在の日本における)正社員としての働き方とも違うものだ。彼は以前アルバイトとして働いていた職場で、長時間労働を強いられる正社員の現実も目の当たりにしていた。

 氷河期世代の労働者にとって、よく耳にしてきた言葉が「お前の代わりはいくらでもいる」だ。だからこそ、ようやく正社員採用された者は、休めない。劣悪な雇用でも職にしがみつく。しかし、土屋氏は、プラットフォームビジネスのモデルは、その言葉を逆手にとることができるという。すなわち、「お前の代わりはいくらでもいる。だから、つらいとき、休みたいときは休んでいいんだよ」と。それは、うまく運用しさえすれば、正社員として採用されるよりも、魅力的な働き方なのだ。

 もちろん筆者は、プラットフォームビジネスの未来が、手放しで幸福なものになるとは考えてはいない。思想史的に考えるならば、人間の尊厳が保障される働き方と、資本主義の本質的な要素であるアンチ・ヒューマニズムの対立は決定的なものであり、容易に乗り越えがたく感じる。スラヴォイ・ジジェクが憂慮するように、プラットフォーマーたるグローバル企業が、個人の自由と多様性という美名のもと、匿名の専制体制を築く可能性もある。

 だが、その問題については、とりあえずここでは議論しない。筆者がここで述べたかったのは、「人生再設計第一世代」と政府によって名指しされた人々のうちの一人が、自分自身と再び邂逅するまでの物語だからだ。

 そうした個人のライフヒストリーこそが、グローバルな問題を理解するための、ローカルな出発点なのだ。

<取材・文/北守(藤崎剛人)>

【北守(藤崎剛人)】
ほくしゅ(ふじさきまさと) 非常勤講師&ブロガー。ドイツ思想史/公法学。ブログ:過ぎ去ろうとしない過去 note:hokusyu Twitter ID:@hokusyu82

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最終更新:1/22(水) 8:33
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