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落合陽一×杉山 央(森ビル)「チームラボボーダレスという『不親切なミュージアム』が大成功した理由」【前編】

1/22(水) 6:30配信

週プレNEWS

大手ディベロッパーの森ビルと、世界で活躍するアートコレクティブ・チームラボの異業種連携によって、2018年6月に東京・お台場にオープンした「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」(以下、チームラボボーダレス)。

【画像】杉山氏が制作した装置「フキダシステム」とチームラボボーダレスの『人々のための岩に憑依する滝』

美術館でありながら順路がなく、境界なく連続してつながる世界を「さまよい、探索し、発見する」ことをコンセプトとし、施設名称にも採用した"ボーダレス"には、「作品と作品」「作品と鑑賞者」「自己と他者」などすべての境界を曖昧にしていくという意味が込められている。

面積10000㎡という圧倒的な規模を誇るチームラボボーダレスは大きな支持を受け、今も入場待ちが生じるほどの人気スポットとなった。2019年8月には米TIME誌の「World's Greatest Places 2019(世界で最も素晴らしい場所 2019年度版)」にも選出されるなど、早くも日本の新しい名所として認知されている。

このチームラボボーダレスの企画運営室室長を務める森ビルの杉山 央(すぎやま・おう)は、学生時代から都市、アート、テクノロジーの3分野が重なる表現の魅力にとりつかれていた。やがて森ビルに就職し、都市そのもののデザインを構想する側に回り、世界にも前例のない美術館を作り上げる――そんな杉山の発想の源泉は、イタズラ心だった。

* * *

杉山 僕は学生時代、街を使ったアート活動をしていました。一例を挙げれば、壁の近くを人が歩くと頭の位置に映像がくっついてくる「フキダシステム」という装置を作って「お腹減ったね」といった漫画の吹き出しが現れるようにする......など、アートというより、イタズラ活動のようなものです。

当時は簡単な自動追尾装置すら普及していなかったので、僕は「移動体付随情報表示装置」として特許を取り、いろんな街でゲリラ的に発表していました。

だけど、街を使ったゲリラ的なアート活動をやっているとしょっちゅう怒られるし(笑)、表現に熱中するあまり大学に7年間もいてしまって、フリーの立場での活動はひと通りやり尽くした感があったんですね。



そこで一度、今後の進路をとことん考えました。僕のやりたいことは街を使った表現だ。そこは揺るがない。もっと大きなスケールで続けるには、街を作る側に入っちゃえばいいんだ。そう思って、森ビルに就職したわけです。

うれしかったのは、それから20年近くたって、学生時代にアートイベントで知り合っていた人たちと仕事で再会できたことです。猪子寿之(いのこ・としゆき)さん率いるチームラボの方々がまさにそうで、彼らと組んでお台場に建てたのが「森ビル デジタルアート ミュージアム」、通称チームラボボーダレスです。

チームラボボーダレスはひと言でいうと、チームラボの作品を集めた、ものすごく巨大なミュージアムです。床、壁、天井、すべて映像に包まれた世界が広がっています。その映像は500台を超えるコンピューターとほぼ同数のプロジェクター、無数のセンサーで制御され、来館者によって刻々と変化します。



例えば、『人々のための岩に憑依する滝』という作品では、水の映像が流れていて、その上を人が歩くと水流が人にさえぎられて分かれていく。これは、コンピューターがリアルな展示空間とそっくり同じ空間を3Dのバーチャル空間で作っていて、無数のセンサーが人の動きをバーチャル空間にプロットしています。人の存在をリアルタイムで物理シミュレーションし続けているので、展示空間内の水の動きも刻々と変化しているわけです。

チームラボボーダレスの世界の中では、来館者は作品の一部となり、作品を変化させることができます。複数の人が、今見ている作品の景色を同時に変化させる。そんな世界が実現しています。

落合 これができてから1週間くらいで「メディアアートとはこうあるべきだ」とか定義したがる人たちが一斉に沈黙しましたよね(笑)。それくらい効きました。

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最終更新:1/23(木) 17:40
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