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高齢者がより活躍できる社会を構築するには──同一労働同一賃金に基づいた処遇の改善や多様な定年制度を

1/23(木) 15:35配信

ニューズウィーク日本版

<労働力不足や年金支給開始年齢の引き上げとともに70歳までの雇用を確保する政府の動きが加速しているが、企業の多くは人件費増を避けるために60歳で雇用契約を終了し、新しい条件で再雇用する制度を選択している。この方法は企業と働き手にとってデメリットが大きい>

<日本政府が70歳雇用に動き出す>

定年延長に対する日本政府の動きが本格化している。政府は2019年5月に開催された未来投資会議(議長・安倍首相)で、希望する高齢者に対し70歳までの雇用確保を企業に求める高年齢者雇用安定法の改正案の骨格を示した。現行法では、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条第1項に基づき、定年を65歳未満に定めている事業主は、雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するために、1)定年制の廃止、2)定年の引上げ、3)継続雇用制度(再雇用制度)の導入のうち、いずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施することを義務化している。

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今回の改正案では、企業が労働者を同じ企業で継続して雇用することを義務化した上記の三つの選択肢に加えて、社外でも就労機会が得られるように、4)他企業への再雇用支援、5)フリーランスで働くための資金提供、6)起業支援、7)NPO活動などへの資金提供という項目を追加した。定年延長による人件費増を懸念する企業に配慮した措置だと言える。

また、政府は2019年9月に社会保障制度改革の司令塔となる「全世代型社会保障検討会議」(議長・安倍首相)の初会合を開いた。検討会議では、今後70歳までの就業機会の確保を含めて、60~70歳の間で選べる年金受給開始年齢の70歳超への選択肢拡大、疾病・介護予防の推進、後期高齢者の窓口負担の引き上げ、介護保険サービスの自己負担の引き上げなどを議論する予定である。

<70歳雇用推進の背景>

では、なぜ政府は70歳雇用を推進するなど高齢者の労働市場参加を奨励する政策を実施しようとしているのだろうか。その最も大きな理由の一つは少子高齢化の進展による労働力不足に対応するためである。2018年2月1日現在の日本の総人口は1億2,660万人で、ピーク時の2008年12月の1億2,810万人に比べて150万人も減少しており、2065年には8,808万人まで減少すると予想されている。一方、労働力人口は、女性や高齢者の労働市場への参加が増えたことにより、2013年以降はむしろ増加している。しかし、15~64歳の生産年齢人口の減少は著しい。日本における2016年10月1日現在の15~64歳人口は、7,656万2,000人と、前年に比べ72万人も減少した。15~64歳人口の全人口に占める割合は60.3%と、ピーク時の1993年(69.8%)以降、一貫して低下している。さらに、昨年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数)は1.42で改善されず、1年間に産まれた子どもの数は86.4万人で、統計を取り始めて以来初めて90万人を割ることが厚生労働省の推計で明らかになった。死亡者数から出生数を差し引いた人口の自然減は過去最大の51万2千人で、13年連続で人口が減少することが予想されている。このままだと15~64歳の生産年齢人口はさらに減少するだろう。

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最終更新:1/23(木) 18:44
ニューズウィーク日本版

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