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シネマ5(大分市):開業以来の黒字経営、コアなファンが熱烈支持―地方のきら星映画館(上)

1/23(木) 15:30配信

nippon.com

金井 秀介

JR大分市駅前の商店街にあるシネマ5(及びシネマ5bis)という映画館は、2つのスクリーンしか持たない、いわゆるアート系映画を中心とした作品を上映する典型的な地方の小規模映画館だ。そして1989年の営業開始以来、現在に至るまでずっと黒字経営を続けている経営学的には奇跡的な映画館でもある。

映画館は迷路構造

同映画館の年間売上の約40%は約1300名のシネマ5の会員によって成り立っている。つまり売上の半分近くをとてもコアなロイヤルカスタマーによってあげているのだ。そう言うと、さぞかし特別な経営をしているのかと思う方もいるかもしれないが、経営者の田井肇氏は一見すると他の映画館と違いのない至ってごく普通の経営をされている。しかし、その経営をつぶさに観察すると、田井氏の映画館経営についての深い思想と、そのきめ細かい経営展開に驚かされる。その一端をご紹介しよう。

シネマ5は小さい映画館なので、商店街の通りに面した小さな入口と劇場内客席の間を結ぶ直線距離は10メートルもないのではないかと思う。しかし、この映画館に来た顧客は実際には通りに面した入口を入ると階段を登りながら右に曲がり、登りきると大きなガラス扉を抜けて突き当たり奥の受付でチケットを購入することになる。

受付左手の小さなカフェスペースを抜けると小さな映画館系の書籍スペースがある。その間の階段を登り、正面の映画パンフレットコーナーを左に曲がるとようやく上映スペース入り口前にたどり着く。つまり、わざわざとても面倒な作りになっているのである。一般的に小売業はすぐにお客さんを販売スペースに呼び込みたいものだ。しかし、田井氏は、映画館は迷路構造になっていることが必要だと主張する。

観客は外の日常の世界から中の非日常の世界(映画の世界)に入るために、また、映画を観終わった後、すぐに日常に戻りたくないと考えるものなので、その場にとどまるための「理由」を映画館が提供しているというわけだ。つまり、お客さんが求めているのは、単に日常の延長として映画を観ることではなく、映画鑑賞を非日常体験として味わいたいということであり、そこに映画館がいかに応えることができるのかが重要なのである。

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最終更新:1/23(木) 15:30
nippon.com

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