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龍角散“大復活の立役者”の女性役員が「左遷・降格」の仰天事情

1/23(木) 7:31配信

現代ビジネス

龍角散の女性役員を襲った“災難”

 「ゴホン! といえば龍角散」は、日本で最も知られた、そして優れたキャッチコピーのひとつだろう。のどの調子が優れない時、龍角散をイメージする人は少なくない。

税務署があえて言わない、年金暮らしの人が「手取り」を増やす裏ワザ

 テレビCMなどにも資金を投じ、「のどに優しい家庭医薬メーカー」という企業イメージが浸透した株式会社龍角散だが、知名度に比して企業規模はそれほど大きくない。売上高204億円(19年3月期)、当期純利益17億円、従業員数は106名である。

 その龍角散で、企業イメージを毀損しかねない事態が進行している。

 きっかけは、18年6月、「セクハラ被害をデッチ上げた」として解雇された元法務部長の女性が、東京地裁に不当解雇などで会社側を提訴、厚生労働省記者クラブで会見を開いたことだった。

 18年12月6日に開かれた忘年会で、藤井隆太社長が女性社員にセクハラ発言を繰り返し、その行為を見とがめた元法務部長の姉で執行役員の福居篤子さんが、担当職責の妹に伝え、それを問題視した妹が人事課長と一緒にヒヤリングを実施した。

 そのうえで再発防止策などを講じようとしたところ、巻き返しに出た藤井社長が、被害女性と話をし、「セクハラはなかった」という証言を取って逆襲。12月17日、元法務部長に自宅待機を命じたうえ、19年3月28日付けで解雇した。

 この「地位確認等請求事件」は、地裁で弁論準備が進められている。セクハラの有無と不当解雇かどうかの結論は、証人尋問などを経て、年内には下されよう。

 この争いについては既にメディアで報じられているが、今回、私がお伝えしたいのは、姉の福居篤子さんに降りかかった“災難”についてである。

二度の左遷

 「らくらく服薬ゼリー」の生みの親で、「龍角散ダイレクト」「龍角散ののどすっきり飴」の開発に関与したことで知られるヒットメーカー。

 安藤百福賞「発明発見賞」、発明協会「発明奨励賞」、日本薬剤学会「製剤の達人」など数々の賞を受賞し、「龍角散の顔」としてマスメディアに取り上げられることが多く、講演活動もこなしてきた福居さんは、今、執行役員ヒラに降格させられている。

 最初は、左遷から始まった。

 妹が、自宅待機を命じられている間の18年12月28日、千葉工場への異動を命じられる。それまでの職責は、企画開発部、国際部、医薬部、安全管理部、マーケティング部を束ねる執行役員開発本部長だった。

 しかし、19年1月1日付けで開発部長だけの職責となり、東京・神田の本社から千葉工場勤務となった。以降、部長以上が出席する経営会議への出席は認められず、引き継ぎ業務もないまま、実質的な仕事がない名目上の工場勤務の開発部長となった。

 実は、千葉工場への左遷は二度目である。

 第一薬科大を卒業後、大手総合病院に臨床薬剤師として勤務していた福居さんが、龍角散に転職したのは91年。「どうして製薬会社は飲みにくい薬を作るんだろう」と、常々、感じていた福居さんは、「作る側に回ってみよう」と、転職を決意した。

 やる気も能力もあるがゆえに福居さんは、「女人禁制」が色濃く残る旧態依然とした龍角散で、古参役員・幹部らとぶつかることが多かった。

 佐竹藩(秋田地方)20万石の御典医だった初代藤井玄淵が、藩薬として龍角散を創薬、蘭学を学んだ2代目玄信が、漢方処方のベースに西洋生薬を取り入れて改良した。

 現社長までの間に、8代200年の歴史がある龍角散にとって、女性がズカズカと入り込んでくることへの拒否反応があったのだろう。

 一度は、辞職を決意した福居さんだが、「改革につきあわないか」という藤井社長の言葉でとどまる。

 社長は音大卒の異色の経歴。製薬会社を経て、94年、龍角散に呼び戻されたものの、借金まみれの甘えが蔓延する社風に驚き、福居さんのような前向き率直な人材に期待、開発を任せたという。

 福居さんと一緒に現場に出た藤井社長は、お年寄りがおかゆに薬をかけて食べているような介護に接して驚き、それが福居さんの服薬補助ゼリーの推進につながり、98年、「らくらく服薬ゼリー」は発売された。

 だが、一朝一夕に会社の体質が変わるわけではなく、00年10月、千葉工場への異動を命じられる。古参役員の巻き返しによる左遷。だが、藤井社長は、さらに巻き返して反改革派を一掃、2年後に体制を立て直して福居さんを本社に呼び戻す。

 以降、ワンマンで営業をリードする藤井社長と、開発部門を任されヒット作を量産する福居さんは龍角散を、社長就任時の40億円から200億円へと5倍以上に伸ばした。中国では「神薬」として人気が高く、インバウンドブームの火付け役にもなった。

 2人のコンビは、メディアで取り上げられることが多く、「龍角散復活の物語」として経済ジャーナリズムの“お手本”になっているのだが、今回、藤井社長は元法務部長との“姉妹連帯”を疑い、決して許さない。

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最終更新:1/23(木) 12:10
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