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ECBの政策再評価と中央銀行の新たな役割の議論

1/24(金) 10:53配信

NRI研究員の時事解説

ECBが「政策再評価」に着手

欧州中央銀行(ECB)は23日に定例理事会を開き、金融政策の現状維持を決めた。市場の関心は、政策変更の有無よりも、ECBが検討している「政策再評価」の内容に集中していた。この点についてラガルド総裁は、記者会見で次のように説明している。

「われわれは多くの問題について見直しを行う。それはわれわれがどのように実施するのか、どのように評価するのか、どのような手段を用いるのか、どのように意思疎通するのかについてだ。意思決定や公表、使用する文言、到達範囲、あらゆる利害関係者とのエンゲージメントなど意思疎通に関するすべての方法を網羅するだろう。これらすべてが戦略の要であり、そのため、広範囲な見直しになる」(ロイター通信による)。

あまりに具体性のない説明に、金融市場は失望したことだろう。それは、理事会内部での意見が依然として分かれていることを意味していよう。あるいは理事会で決定する前に総裁としての見解を示すことに慎重な、前任とは対称的なラガルド総裁の調整型スタイルを反映している面もある。

ラガルド総裁は、この政策再評価の議論の期間を年末までとしているが、ずれ込む可能性もあると指摘し、特定の期限を設けない考えを示している。

進む物価目標の見直し議論

政策再評価の議論の中で中核のとなる第1のテーマは、物価目標の見直しだ。ECBは創立時の1998年に、物価目標を「2%を下回る水準」と設定した。その後2003年に見直し、「中期的に2%を下回るが、2%に近い水準」という現在の表現に改めている。

物価目標の見直しが議論されている背景には、実際の物価上昇率がECBの目標を下回り続ける中、予想物価上昇率(期待インフレ率)がさらに下振れ、いわゆる日本化が進むことへの警戒である。

この物価見通し修正議論で第1のポイントとなるのは、目標を上下対称とするか否かだ。現在の目標では、2%が上限のように理解され、それが予想物価上昇率の上昇を阻んでいる、との意見が理事会内で多い。理事会メンバーのビルロワドガロー仏中銀総裁は、物価目標は上下に対称的で弾力性を持つ必要がある、という考えを示している。

この議論は、米連邦準備制度理事会(FRB)が進めている「金政策の枠組見直し」と近いものであり、ECBの政策再評価はFRBの「金政策の枠組見直し」をモデルとしていることは明らかだ。

物価見通し修正の第2のポイントは、表現の曖昧性への対応だ。現在の物価目標の表現は曖昧である。それが、金融政策が予想物価上昇率に与える影響を低下させているとの指摘もある。

第1、第2の双方の議論を踏まえると、物価目標及びその表現は、よりシンプルに「(中期的に)2%」等へと最終的に修正される可能性が考えられる。

ただし、物価目標やその表現を如何に修正しようと、それが予想物価上昇率あるいは実際の物価上昇率に与える影響は限られる、と筆者は考えている。

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最終更新:1/24(金) 10:53
NRI研究員の時事解説

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