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「サヨウナラ」認知症の父を老人ホームに入れようとしたら…

1/25(土) 5:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

多くの中高年が直面する「親の介護」問題。老人ホームへの入居に抵抗を持つ人も多く、「親の面倒は子どもが見るべき」と親族一同考えがちだ。しかし、フリーライターの吉田潮氏は、著書『親の介護をしないとダメですか?』(KKベストセラーズ)にて、「私は在宅介護をしません。一切いたしません」と断言する。親孝行か、自己犠牲か。本連載では、吉田氏の介護録を追い、親の介護とどう向き合っていくべきか、語っていく。

「長らくお世話になりました、サヨウナラ」

●父、老人ホームのショートステイへ

「誰が何と言おうと、施設に入れよう」と決意した翌週、インフル騒動のときに助けてくれたケアマネさんに相談。彼女は父が要介護2になってからのお付き合いだ。私自身はこのとき初めて会ったのだが、頼りになる人だと思った。というのも、彼女はずっと父を見てくれていただけでなく、むしろ頑張りすぎる母を見て、ひそかに心配していたという。ああ、やはり看破(かんぱ)していたのだと思った。

ケアマネさんの訪問時には、面談という形で父も話すが、母も話す。おそらく母は「夫はまだ大丈夫です。それに私がまだ健康ですから、何でもできますから」と言い続けていたのだ。プロはそういうところも、ちゃんと見抜くんだよね。

まずは、介護認定の区分変更申請をお願いする。そして、ホームに入居させたいと伝えた。彼女もすでにリサーチ済みで、現状で可能な提案をもってきてくれた。

家から徒歩10分ほどの特別養護老人ホーム(以下「特養」とも表記)で、30日間までならショートステイが可能だという。1泊3食おやつ付きで4000円。30日間で12万円だ(2割負担の金額)。

また、お隣の市に今春新設される特養があり、今申し込んでおけば入れる可能性もあるという。多床室(4人部屋)にまだ空きがある。新設の特養に入れるチャンスはなかなかないし、申し込んでおいて後で断ってもキャンセル料は発生しない。

父は現状、要介護2だが、今回の件でおそらく1ランクアップするだろうと推測。特養の入居は要介護3以上が条件なので、エントリーだけでもしておいたらどうか、という提案だった。

母も私もホーム入居を前向きに、といっておきながら、実際の老人ホームがどんなものか、まったくわかっていなかった。まずは母の疲弊を癒やすためにも、30日間のショートステイで特養がどんなところか、見ておくことに。

このときの母は複雑な心境だったようだ。

ほぼ初めての体験である独居の寂しさ、自分が陥る生活不安、介護ストレスからの解放感、施設に入れる罪悪感。父への愛と憎しみが日替わりで交互に訪れる精神状態。私と姉は鬼と化し、施設入居を勧め続け、母も最後は納得した。

で、当の本人はというと、ショートステイを拒まなかった。

おそらく、ショートステイの意味がよくわからなかったのだろう。デイサービスに行くのと同じような感覚だったのかもしれない。ただなんとなく、家族が頻繁に集まって嬉しいけれど、なにやら相談している。

自分をどこかに追いやるのかもしれない、という漠然とした不安感は抱いていたに違いない。時折、寂(さび)しさを言葉の端々に匂わせたものの、ショートステイする施設の迎えが来た朝のことは今でも忘れない。「長らくお世話になりました、サヨウナラ」と、父がおどけたのだ。

そのときは私も「まあちゃん、何言ってんの!」と笑って返した。でも、その夜。父の言葉を思い出したとき、なぜか泣けてきた。

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最終更新:1/31(金) 10:21
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