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養育費払わぬ元配偶者 銀行情報などで債権差し押さえ

1/26(日) 7:47配信

NIKKEI STYLE

Case:72 数年前、調停で夫と離婚した際、子どもの養育費を月に5万円払ってもらう取り決めになっていました。1年ぐらいは約束通りに払われていたものの、その後、滞るようになりました。督促しようにも携帯電話はつながらず、以前の職場に電話してみたのですが、退職してしまっており、連絡すらつかない状況です。泣き寝入りするしかないのでしょうか。

■養育費の不払い、深刻な社会問題に

養育費については、このコラムのCase:5―2「慰謝料、財産分与、養育費 離婚のお金の常識」や、Case:47「『妻にも収入、養育費払わぬ』 離婚協議中の夫が主張」などでもたびたび取り上げてきました。
また、最高裁が2019年12月、全国の家庭裁判所で用いられる養育費の算定表を16年ぶりに改定し、高所得世帯を中心に養育費が増額されることが明らかになりました(ただし、算定表が改定されたというだけの事情で、一度取り決められた養育費が増額になることはないと解されているので、相談のケースとは直接関係ありません)。
一方、取り決めたはずの養育費の不払いは深刻な社会問題となっており、兵庫県明石市が養育費不払いの立て替えや、支払わない者の氏名を公表できる条例の制定を検討していると報じられ、その是非をめぐって議論になったのは記憶に新しいところです。

■法改正で第三者から債務者の情報を取得

養育費の不払いは本来、強制執行手続きにより、裁判所を通じて相手方の資産から強制的に回収するのが法律の建前ですが、相手方の資産がわからない場合、強制執行のしようがありません。そこで19年5月、民事執行法が改正され、「第三者からの情報取得手続き」という新たな制度が新設されることになりました。債権回収の実効性向上の切り札として期待は大きいのですが、どの情報を得るかによって手続きの要件が異なっており、規定の仕方も複雑なので注意が必要です。

取得が可能となるのは(1)登記所から取得する債務者所有の不動産情報(2)住民税の源泉徴収をしている会社の名称を把握している市町村や厚生年金を納付している会社を把握している年金機構から取得する債務者の勤務先情報(3)金融機関や振替機関などから取得する債務者の有する預貯金などの金融資産の情報――の3つです。
ただ、(1)と(2)の照会をするには、前提としてまず「財産開示」という手続きを裁判所に申し立てる必要があります。財産開示とは、債務者を裁判所に呼び出して、債務者に質問して財産の有無や所在を確認する手続きですが、財産開示を申し立てることができるのは判決や調停調書など(債務名義と言います)をすでに取得しており、債務者に対して強制執行を行ったが奏功せず、満額の弁済を受けられなかった債権者に限られます。
つまり、債務名義を得るのに1回、強制執行で1回、最低2回は裁判所を利用している人が財産開示を行い(3回目)、それでもなお債務者の財産が明らかにならない場合に初めて使えるのが第三者からの情報取得手続きになるので、ここに至るまでに合計4回、裁判所を利用することになります。相手の資産がわからないからといって、簡単に使える手続きではないことには留意が必要です。

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最終更新:1/26(日) 7:47
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