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「入試大混乱」キーマンに迫る(2)南風原朝和氏 現場を惑わす曖昧な改変は止めよ

1/28(火) 7:06配信

中央公論

南風原朝和氏(東京大学名誉教授) 聞き手・今井むつみ(慶應義塾大学教授)

 大学入試改革の二本柱である、英語の民間試験導入と、国語・数学の記述式問題導入が延期されることとなった。改革を推進してきた鈴木寛・元文部科学副大臣と、それに反対してきた南風原朝和・東京大学名誉教授に、今井むつみ・慶應義塾大学教授が見解を聞いた。
 ここでは南風原朝和氏へのインタビュー記事の一部を抜粋してお伝えする。

●「暗記」だけの試験だったか
今井:今回の大学入試改革は、英語の民間試験導入と、国語・数学の記述式問題の導入について、「待った」がかかりました。私は、改革推進派の意見にも、反対派の意見にも頷けるところがあると思いますが、両者の主張はすれちがっているようにも見えます。推進派の人たちは教育改革の理念を浸透させるために入試改革を実施したい、反対派の人たちはひたすら実施上の問題のことを批判しているようです。

南風原:私は、今回の一連の改革を進めようとしている方々の理念について、その中での言葉の使われ方、意味に違和感があります。例えば、「現状の大学入学者選抜は、知識の暗記・再生の評価に偏りがち」だから、改革すると言われます。ここで「知識」は「暗記」し「再生」されるものと単純に捉えられています。しかし、実際には知識は個人の中でダイナミックに更新・再構成されるもので、知識を使って思考するプロセスを経て、より深い理解を伴う知識が構成されていきます。つまり、知識と思考は双方向的な関係にあるはずです。

今井:「知識」をわかりやすく分ければ「死んだ知識」と「生きた知識」になります。死んだ知識とは、頭にあってもただ溜めているだけで使うことができない知識。生きた知識とは、知識が断片でなく体系の中に位置づけられ、他の知識と接続されているものです。思考力は生きた知識と不可分です。

南風原:私もそう思います。最近はやりのテレビ番組で、東大生が登場するクイズ番組がありますが、そこで試されているのは一見すると、ただの断片的、表面的な知識です。しかし、参加している大学生はその内容をわかりやすく説明できるし、いろいろなこととの関係付けもできている。つまり、深い知識、高いレベルの知識になっているわけです。
 そのような「断片のように思われる知識でもそこにある共通した原理がわかる、あるいは相互に関連付けられる知識」は、「偏重」される価値のある大事なものです。「知識偏重からの脱却」を主張される方々には、「知識」というものの意味について、見直していただく必要があると思います。

今井:私は、推進派の方々は、死んだ知識を生きた知識にしなければならないと考えているのだと思います。それには賛同しますが、南風原さんを含めた反対派の人たちに、知識が思考と対立しているように読めてしまうのは問題だと思います。

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最終更新:1/28(火) 7:06
中央公論

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