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新型肺炎の経済への影響を考える上で重要な統計数値

1/28(火) 13:54配信

NRI研究員の時事解説

SARS発生時程度の訪日中国人観光客数の減少が生じた場合

新型肺炎が日本あるいは世界経済に与える今後の影響を考える上で参考となる、幾つかの統計数値を確認しておきたい。

中国政府が1月27日から中国人の海外団体旅行を禁じたが、それが日本のインバウンド需要にかなりの悪影響を生じさせることは、もはや確定的だ。2002年に発生し、2003年に本格的に拡大したSARSの場合には、2003年5月の訪日中国人観光客は前年比で-69.9%まで減少した。現在、中国人観光客の3分の1程度は団体旅行で訪日していることから、海外団体旅行の禁止措置を受けて、訪日中国人観光客数は近いうちに少なくとも30%以上減少することになるだろう。さらに、個人旅行で訪日する中国人観光客のなかでも、旅行を控える動きがあったり、都市によっては飛行機での移動が制限されている人もいることから、訪日中国人観光客数が全体でSARS 発生時と同様に前年比で7割減まで落ち込む可能性も十分にある。ちなみにマカオなどでは、本土からの観光客数は既に前年比8割減となっている。

しかし、仮にSARS発生時と同程度の割合で訪日中国人観光客数が減少するとしても、日本経済に与える悪影響については、今回の方が格段に大きい。2002年と比べて2019年の訪日中国人観光客数は21倍にも膨れ上がっているためだ。統計はないが、訪日中国人観光客の一人当たりの日本での支出額もこの間増えただろう。

この点を考慮に入れて、仮にSARS発生時と同程度の割合で訪日中国人観光客数が減少した場合の日本のGDPへの影響について試算したが、その結果は、本コラムで既に示した通りである(「新型肺炎がインバウンド需要の減少を通じて日本経済に与える影響試算」、2020年1月27日)。

中国の成長率2%低下で世界の成長率0.33%、日本の成長率0.10%低下

日本及び世界経済への影響について、SARS発生時と今回とを比較する際には、世界経済に占める中国経済の規模の変化を考慮に入れておく必要がある。国際通貨基金(IMF)の統計によると、中国の名目GDPが世界のGDPに占める比率は、2002年の4.3%から2019年には16.3%へと4倍近くにまで高まっている。仮にSARS発生時と同程度、中国の成長率が低下した場合でも、世界の成長率の押し下げ効果は4倍近くとなる。

SARSの拡大が本格化した2003年4-6月期の中国の成長率は、前年同期比+9%程度と、前期の同+11%程度から2%ポイント程度低下した。また、IMFによると、SARSの流行が中国と香港の経済に与えた影響は、GDPの1%~3%だという。双方の数字から、仮に新型肺炎の影響で中国のGDPが2%押し下げられるとした場合、世界のGDPは0.33%押し下げられる計算となる。中国経済の悪化が他国に及ぼす影響も考慮すれば、その影響はさらに大きいはずだ。

ちなみに中国のGDPが2%低下し、世界のGDPは0.33%押し下げられた場合には、日本のGDPは1年目で0.10%押し下げられる計算となる(内閣府「短期日本経済マクロ計量モデル(2018 年版)」による)。

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最終更新:1/28(火) 13:54
NRI研究員の時事解説

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